「リピート消費」「派生消費」の具体例
私たちの調査では、消費によって心が動いた具体的な商品やサービスを自由回答の形式で聴取しています。実際に寄せられた声もあわせてご紹介したいと思います。
1:リピート消費による消費の好循環
「リピート消費:48.2%」は、消費の好循環グループの中でも最も構成比率が高いことから、消費の好循環を説明する際に最も影響力の強いグループと言えます。
自由回答を見てみると、たとえば次のような回答がありました。“心が動いた消費体験”がリピート消費に繋がっていることを確認できます。
・「スポーツウエルネス吹矢。長らく新しい吹矢を買っていなかったので、新しいデザインのものを買って心機一転。昇段を目指したいと思った」
・「映画スラムダンク。感動が欲しくて2回目の映画鑑賞をした」
・「化粧品。HAKU。最近シミの多さを再確認し、今まで利用したことのなかったHAKUを購入、少しでもシミが目立たなくなるようになりたい」
2:派生消費による消費の好循環
次の「派生消費:22.2%」は、ある消費をした結果、ジャンルや関連性を問わず、次に買いたいという気持ちが湧き上がり、好循環消費に繋がるというカテゴリーです。派生消費カテゴリーは、さらに「同ジャンル:14.7%」「別ジャンル:8.3%」「無関係:4.1%」の3つに分解されます。それぞれの場合において象徴的な自由回答を抽出して整理したのが、下の図表です。

そして、以下のように実際の自由回答に仮説的に好循環ストーリーを付与してみても、消費の好循環は、やはり心が動いた消費経験が原動力になっていることがわかります。
Aさんのケース:同ジャンルの派生消費
非常にバイク好きなAさん。好きな部品メーカーも明確に決まっており、リピート的にそのメーカーのものを購入し続けていきたいという気持ちが強いのだと想像されます。
Bさんのケース:別ジャンルの派生消費
薄着になってくるこれからの季節を考えて、ネックレスを購入したBさん。これから外出機会が増えることを見越して洋服も買いたいという気持ちが芽生え、さらに年内には靴も買いそろえたいという、非常に外交的なマインドになっていることが想像されます。
Cさんのケース:無関係の派生消費
鹿島神社に行ったところ、直接的には何も関係ないがソロキャンプをしてみたいという気持ちが高まったCさん。年内には実行に移して、自然を味わいたいと思われています。想像ではありますが、鹿島神宮というパワースポットに行ってみて、自分を見つめ直すような内省的な気持ちが生じ、一度大自然の中で自然と自分を対峙させて物思いにふけってみたい……という気持ちになったのかもしれません。
買い物でトキメくのは、やはり20代女性?!
これまで消費の好循環を概視してきましたが、以降は直近の調査結果から、消費の好循環の基点となる“心が動いた消費体験”について、性別な年齢別の違いがあるかを見ていきましょう。
まずは、良い気分・気持ちが得られた買い物・商品についてです。「たくさんあった~多少あった」の合計スコアを見ると、全体では51.3%でした。男女比では、男性より女性のほうがスコアが高くなっており、男性よりも女性のほうが消費によって良い気分が得られやすいという結果になっています。
さらに、年齢階層別に見ると、男性40代が40.4%で低めなのに対して、女性20代が67.0%と最も高い結果となりました。男性40代は働き盛りではあるものの、お小遣い制で自由にお金を使うのが難しかったり、住宅費や教育費といった出費、さらには最近の物価高の影響もあり思ったように消費をすることが難しい状況にあるのかもしれません。一方で、女性20代は独身者も多いため、消費に関して自己裁量権が大きく、お金さえあれば自分で欲しいものを買い求めやすい環境にいることもあるように思います。

有料の体験(飲食、レジャー、アクティビティ、イベントなど)についても同様の傾向が見られました。良い気分が得られたり、良い刺激を受けたりした有料の体験が「たくさんあった~多少あった」の合計スコアを見ると、男性40代が32.6%であるのに対して、女性20代が60.3%となっています。ここでも、全体平均と比較すると男性40代がやや良い気分を得にくく、女性20代が良い気分を感じやすいということが言えそうです。

一方、有料のコンテンツ(映画、本・漫画、配信系動画・音楽、スポーツ観戦、ライブ、ゲームなど)は上の2つのカテゴリーとは異なる傾向を示しています。良い気分が得られた有料の体験が「たくさんあった~多少あった」の合計スコアで見ると、男性20代が53.7%、女性20代が56.0%で、それぞれ70代前半のスコアと比べるとおよそ20ポイント差のスコアとなっていたのです。歴然として、若年層のほうが良い気分を得やすいことなります。

これは仮説ですが、上の年齢層より若年層のほうが、サブスクリプションサービスやコンテンツを有料で視聴することへの心理的障壁が低いため、有料コンテンツを消費する機会がそもそも多いのではないかと思われます。