思いつきを逃さず書き留めて体験をより具体化
世界観を作成した後は、継続的に使ってもらえるための設計を考えていきます。継続して試着を楽しんでもらうために、対話体験のヒントとして擬人メタファーを使用した人間味デザインを考えることにしました
考えた要素は2つ。1つは、まるで専属のスタイリストのようにレコメンドしてくれる機能。もう1つは、パーソナルカラーコーディネーターを行ってくれる機能。結果としては、この両方の機能を兼ねたパーソナルコーディネーター「じぶんコーディネーター」としました。

最後にSTEP7では、思いつきをできるだけ書き記す必要あります。このSTEPにより具体的に体験のイメージが浮かぶと思います。世界観の舞台になる場所のイメージや対話をするやり取りのイメージ、近いと思うメタファー、キーワードなど、一連のプロセスで出てきたイメージなどは、逃がさないように書き記しておきます。これらは、それ以降の制作プロセスで役立ちます。加えて、フロー図やステップなどの流れも非常に有益です。どんな些細なメモも、残すことで見返せるようにしておきましょう。

一言が、制作プロセスの大きな方向性を決める羅針盤に
ここまで実際にSTEPを1つずつ見てきました。
ここまでの7つのSTEPはあくまでもアイデア開発の部分で、さわりになります。考えたアイデアが本当に実現可能かは、テクノロジー、エンジニアリング、コストなど、フィジビリティの確認もその先に控えているため、さらに解像度を高く細かい部分を考え、作っていく必要があります。
ただし、この最初の大きな方向性を決める「一言」次第でプロジェクトの進行方向は大きく異なります。この体験の一言を作ることでプロジェクト全体の地図ができ、様々な制作プロセスにおける羅針盤になるのです。

ここまで全6回でお話してきたこの発想法は、あくまでも体験を開発していく上でのほんの入り口にしか過ぎません。この後の具体化や、制作プロセスすべてが兼ね備わってはじめて成立します。
その認識の上で、「一言」の大切さをお話してきました。広告現場で、20年以上、マーケティング、コミュニケーション、サービス開発、ブランド体験開発などの制作に関わってきた中で「一言」が与える価値や影響を何度となく経験してきたことで重要性を実感してきたからです。
間違いなく言葉一つで、カタチになるものが違いますし、プロジェクトの航路も大きく変わってしまいます。
そのため、本連載をお読みいただき少しでも、みなさんのカタチづくる体験が素晴らしいものになり、プロジェクトの局面で進むべき舵を切り、良い航海になることを心から望んでいます。
全6回、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
