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ビジネスのスピード感が激変!地方の伝統企業がZoomで実現した、BtoCコミュニケーション

 コロナ禍の影響により、オンラインツールを活用したプロモーションが急速に拡大した。一方でオンライン化が進められず、顧客接点の創出に課題を抱えるBtoC企業も少なくない。石川県輪島市に工房を構え、伝統的な技法で木工製品・漆製品を手掛ける輪島キリモトでは、商談の場としてZoomを活用。距離にとらわれないコミュニケーションを実現している。本記事では、顧客接点の創出ツールとしてのZoom活用のポイントを聞いた。

伝統工芸を、暮らしに溶け込む身近な存在へ

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、お二人の自己紹介をお願いします。

桐本(泰):輪島キリモトの代表を務めます、桐本泰一です。当家では代々200年以上、石川県の輪島市にて「木と漆」の仕事に携わってきました。伝統的な漆器「輪島塗」以外にも、独自開発した器・小物・家具・建築内装材・木製品など、幅広く取り扱う創作工房です。天然の木や漆を使って、暮らしにとけ込むようなモノ作りを目指しています。

輪島キリモト 代表 桐本泰一氏
輪島キリモト 代表 桐本泰一氏

桐本(順):経理など会社運営、英語での顧客対応や広報活動を担当している桐本順子と申します。結婚を機に伝統工芸の世界へ入りました。

 大勢の人を介し時間をかけて一つの作品を作っていく様子や作り手の思いを目の当たりにし、伝統工芸品が持つ力を伝え、広めたいと思うようになりました。何もしなければ将来途絶えてしまうかもしれない伝統工芸において、良いものを作ることはもちろん、使う人を増やすことが大事だと考えています。

輪島キリモト 桐本順子氏
輪島キリモト 桐本順子氏

売り場のリアルな声を聞き、工房で活かす

MZ:輪島キリモトさんは、Zoomを活用したライブコマースや商談を国内外に向けて実施されています。Zoomを顧客向けツールとして導入した背景からお教えください。

桐本(泰):元々当家は江戸末期から塗師屋でしたが、昭和の初めから祖父が転業して、漆を塗る前の器や家具木地を作る「木地屋」として輪島漆の下支えをしてきた歴史があります。私が大学を卒業し企業に勤務した後帰郷し、跡取りとして経営に関わりだした時は、バブル期ということもありよく売れていた時代でした。

 しかしそれは「職人が一生懸命作った良いものだ」という漠然としたイメージだけで売れており、漆器の本質的・具体的な良さがまるで伝わっていませんでした。だからこそ私は、「それだけではいけない」という思いがあったのです。そこで、自分でデザインした漆の器、小物、家具を製造・販売することを始めました。

 伝統工芸品の世界では、分業制が確立しています。下請けである木地屋なのに完成品作りまで行い、お客様の前に立とうとすることは、ルール違反ととらえられかねません。そういった葛藤を抱えつつも、2004年には三越日本橋に直営店舗を出す決断をしました。

MZ:下請けという立場から思い切って飛び出し、実際に商品を手に取る顧客と対峙されたのですね。

桐本(泰):はい。そうした決断をしたおかげで、店舗のスタッフが書いた日報が、私たちにとって非常に重要な財産になっています。そこには購入者だけでなく、購入されなかった方の話も載っています。通常、伝統工芸の世界で首都圏から離れた小さな工房が、売り場のリアルな生の声を継続的に把握することは難しいでしょう。

 実際にお客様の声を聞くことで漠然とした課題感がクリアになり、製品のアイデアや「こんな技法を取り入れるといいのでは」とビジョンも生まれてきました。伝統工芸も、顧客を理解し、製品の良さを伝えていくことが重要であることを痛感しました。

 しかし2020年からのコロナ禍で、リアルのようなコミュニケーションをとれる体制作りが喫緊の課題となり、Zoomの導入に至りました。

製品の魅力やコンセプトをオンラインで伝えるには

MZ:様々なオンラインツールの中で、なぜZoomだったのでしょうか。

桐本(泰):お客様とのコミュニケーション方法を模索している折に、IKEUCHI ORGANIC 京都店店長の益田晴子さんに、ZoomおよびNeat frameのサービス活用について紹介されました。Neat frameとは、Zoomと業務提携を結んでおり、オンライン会議用のデバイス「Neat」製品を提供するメーカーです。

 すぐに京都の益田さんのもとを訪問し、ソリューションの有効性から「これはうちでも使える」と思い導入を決めました。Zoomは使い慣れている方が多いツールですし、当社でも社内ミーティングなどでは利用していたのですが、商談でも活用できると感じましたね。

左奥のディスプレイやNeat製品とZoomを使い、店内で商談やライブコマースを実施している
左奥のディスプレイやNeat製品とZoomを使い、店内で商談やライブコマースを実施している

桐本(順):輪島の民宿や民家など古い建物ほぼすべてに漆が使われています。実際にご覧いただけたら、生活の中に溶け込む様子が伝わります。しかし建物を持って行くわけにもいかないので、お客様に実際に来ていただく必要が出てきます。

 ZoomとNeat製品を活用すれば、良質な画質で世界中の人に向けて発信できます。カメラの自動追尾機能もあるので、スタッフが少ない人数でも使用できる手軽さも、非常に魅力的に感じました。

メールや電話ではできない顧客コミュニケーションを実現

MZ:どのような場面でZoomを活用しましたか?

桐本(泰):個人から団体/法人など規模を問わず、商談やライブコマースで活用しています。設計事務所や従来の取引先である百貨店のバイヤー、新規取引先とのコミュニケーションにおいてもZoomを使っています。

 正直、お客様との商談でもこんなに活用できたのは驚いた点です。現物を持って出向かずともオンラインで色味や質感が伝わり、その場で説明や質疑応答もスムーズに行えるので、非常に重宝しています。

桐本(順):ある家族が、出産祝いに輪島キリモトの商品を検討してくださったことがありました。店舗に足を運んでくださりましたが、高額な手前即決とはいかず……。また来訪することが難しいため、Zoomで対応をしました。

 一つひとつ丁寧に気になる商品の特徴やポイントを紹介し、リアルと遜色なく製品の魅力を伝えることができ、結果として購入を決めていただきました。このようなコミュニケーションはメールや電話では実現できていなかったように思います。

MZ:活用した印象やメリットについてお聞かせください。

桐本(泰):やはりお客様とのコミュニケーションにおける安心感が一番大きいです。つながりやすく途切れず、ストレスフリーで対面のようなコミュニケーションができることに驚きました。地方企業の我々からすると、リアルタイムで相手とやり取りをし、製品について伝えられることは非常に大きいです。

桐本(順):以前は「地方だから」と諦めることも多かったのですが、Zoomのおかげで色々な機会が増えました。仕事はもちろん、全国を飛び回っていた毎月の交通費・宿泊費などのコストを別の投資に回せて非常に効率的です。地方企業にとってZoomは社内活用やBtoBだけでなく、BtoCビジネスにおいても有効だと感じます。

ビジネスのスピード感が激変!

MZ:他にどのようなインパクトがありましたか?

桐本(泰):2022年7月にZoomおよびNeat製品を導入したのですが、それまで当社は、コロナ禍の影響の中なんとか持ちこたえているような状態でした。しかし今はZoomを活用することで、商談や打ち合わせのスピード感が格段に上がったと実感しています。

桐本(順):東京のクライアントや三越店スタッフ、輪島の工房と、それぞれ別の場所からZoomを通して商談に参加ができます。店舗(輪島の「漆のスタジオ」)からであれば求められた品をすぐに出して説明できますし、話し合いの内容も濃いものになり、双方の納得感が違うと感じます。

 私たちの商材は高価なため、購入の判断までに時間を要する場合も少なくありません。それでもこれだけ実感があるのは、すごいことだと思います。

 あわせて私たちが大切にしていることは、闇雲に発信するのではなく、自社の価値を届けるべきところをリサーチしたうえでコミュニケーションを取っていくこと。Zoomであれば、オンラインであってもお客様とリアルで会ったような信頼関係を築ける点が、最大の魅力だと感じています。

 お客様とZoomで接点を作ることで、来店への心理的なハードルがぐっと下がり、「“あのお店”に行ってみたい」とわざわざ当店を選んでいらしてくださっています。海外のお客様が実際に来店された際は、対面で会うのは初めてなのにまるで友達のように会話ができたこともありました。

桐本(泰):先ほど紹介した出産祝いに購入いただいた家族のように、ECサイトへの流入・購入でもZoomを活用してご案内することで、器のお手入れ方法などお客様の気になる点も気軽にやり取りできます。物理的な距離を超えて、店頭でスタッフから商品説明を受けたような気持ちでの買い物体験が実現できていると思います。

Zoomを接点に、リアルや海外へと漆製品を届けていきたい

MZ:日本の伝統工業を国内外に発信・展開する企業として、貴社の今後の展望についてお聞かせください。

桐本(泰):私たちの工房は、交通の面では足を運ぶのが大変な地域です。私はずっとお客様のもとに飛んでいける「どこでもドア」が欲しいと思っていました。今、ZoomやNeat製品の機能を最大限に活用することでまさに「どこでもドア」のように、お客様との物理的な距離が縮んだと感じます。

 ECサイトでなんでも購入できる中、企業は「何を伝えるか」を持たないと埋もれてしまいます。オンラインの接点であってもどこかで「リアルで見るともっと良いよ」とお客様に誘導できるかがカギになるのではないでしょうか。

 オンラインのコミュニケーションはゴールではなく、そこからいかに「実際に行きたい」とお客様に感じてもらえるかが、生き残っていく上で一番重要だと思います。私たちも漆製品ができるまでのストーリーや、長持ちさせる方法など、様々な情報発信を構想しているところです。

桐本(順):私は海外の方向けに、色々な情報を英語で発信していきたいと考えています。日本の伝統文化に触れたいと考える海外観光客の方にとって、能登半島も漆器も認知が高いとはいえません。

 つまり、潜在的なニーズがある方々にまだ届けられていない。だからこそ漆製品を通じて日本文化の良さを味わっていただきたいですし、Zoomはそのために欠かせない存在だと思っています。

取材後、Zoomの担当者と一緒に
取材後、Zoomの担当者と一緒に

商品の魅力を伝え、顧客接点を生み出すZoomソリューション

Zoom Roomsについて詳しくは、Zoom 営業チームへのお問い合わせフォームよりどうぞ

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この記事の著者

釘﨑 彩子(クギサキ アヤコ)

 2019年からマーケティング・広告の専門出版社で編集者として勤務。広報・PR分野を中心に編集業務にあたる。2022年よりフリーランスのライターに。媒体問わず、マーケティング、広報、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ZVC JAPAN株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/42597