スポンサーシップの目的が露出からエンゲージメントに移行
千葉ロッテマリーンズの球団経営を担う高坂氏。そして、企業の10倍成長を支援するアドバイザーとして活動する菅原氏。まったく異なる畑で活躍する両氏がなぜ「スポーツスポンサーシップ2.0」で一緒に登壇することになったのだろうか。セッションの冒頭、その企画意図について、モデレーターを務める平地氏から説明があった。
「今スポンサーシップの役割が露出からエンゲージメントに変わってきていると感じています。そして、この露出からエンゲージメントへの変遷というのは、マスメディアからデジタルメディアへと変遷してきた歴史と似ている。菅原さんにはそういった視点でスポンサーシップについて話を聞きたいと思っています」(平地氏)
これまでのスポンサーシップのイメージと言えば、ユニフォームや球場の看板と言った広告での露出が思い浮かぶ。しかし、昨今のスポンサーシップのあり方は多様化していて、冠試合を開催したり、ファン・サポーターと共創で商品開発を行ったり、SDGsと絡めた社会課題解決に取り組んだりと、単なる露出にとどまらない施策に発展している。
一方メディアも、テレビを中心としたマスメディアでの露出がメインだった時代から、SNSを中心としたデジタルメディアやプラットフォームが登場したことで、露出だけでなく消費者とのエンゲージメント(いいねやコメントなどの反応)を重視するようになった。
平地氏は、マーケティングに長年従事しメディアの変遷も見てきた菅原氏をセッションに加えることで、スポンサーシップのあり方をより広い視点で見る狙いがあったのだ。
菅原氏は、この露出からエンゲージメントに移行している理由について、以下のように解説した。
「消費者のデジタルに費やす時間が長くなった結果、テレビを中心としたマスメディアへの露出だけでは届かなくなってきています。またデジタルも露出を補完するだけでなく、能動的に調べてみたり、SNSアカウントをフォローしたりと、ファンとの結びつき(エンゲージメント)を重視する動きが強まっています。そして、スポーツはその結びつきを強められるコンテンツで、エンゲージメントも高くなりやすい力を持っています」(菅原氏)
エンゲージメントが高まる条件とは
続いて、スポンサーシップにおけるエンゲージメントとは、企業がスポンサーシップを通じてエンゲージメントを高めるために必要なものとは何かをテーマにディスカッションが行われた。
菅原氏は、エンゲージメントを「つながりと訳すが、別の言い方をするなら熱量」と表現。ファンの熱量がエンゲージメントとなり、それがまた別のファンに移っていく。その結果、単なる露出を超えたパフォーマンスにつながるという。スポーツの熱量の高さについて、高坂氏は以下のように語る。
「千葉ロッテマリーンズに入社する前の2012年、ZOZOマリンスタジアムに足を運んで試合に熱狂する観客の姿を見て、とてつもない熱量の高さだと感じました。スポーツ業界にいるとそれが当たり前になり感覚が麻痺していきますが、この熱量の高さは代えがたいものだと思います」(高坂氏)
では、このスポーツが持つ熱量=エンゲージメントを活かしたスポンサーシップを行うにはどうすればいいのだろうか。
平地氏はスポンサーシップのポイントとして「ストーリー」を挙げた。
「熱量の高さや盛り上がりに乗っかっていけるのがスポンサーシップの良さ。そして、エンゲージメントが高いスポンサーシップをするためにはストーリーが重要だと思っています。ストーリーは、選手や球団はもちろん、ファン、スポンサーも持っています」(平地氏)
菅原氏はストーリーが存在しているか、していないかでどれだけエンゲージメントが変わってくるのか、例を交えながら解説した。
「たとえば、千葉に住んでいるから千葉ロッテマリーンズを応援するだけでは強いエンゲージメントは作れません。しかし、チャンピオンを応援したい、チャンピオンに立ち向かうチャレンジャーを応援したい、他の選手よりも小さいのに頑張ってきた選手を応援したいといった様々なストーリーを作っていくと、エンゲージメントが強くなります」(菅原氏)