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就活の「とりあえずスーツ」にあえて切り込む 青山商事に学ぶ“社会課題解決型”リブランディング施策


ビジネスパーソンのNO.1サポーターを目指す

──一般的に自社の主軸事業を全面的に打ち出して課題解決を目指す会社が多いと思います。御社の主軸商品であるスーツの打ち出しだけではないプロジェクトを主導しようと考えた理由をお聞かせください

 大きな理由は、コロナ禍を経て、働く人の服装が多様化してきていることです。

 それにともない、就活時の面接官がカジュアルな服装にも関わらず、就活生の服装がスーツでネクタイという状況になることも考えられ、そこに違和感を覚える人も多いと思います。

 現在はまだその違和感に対して大きなムーブメントは世の中で起こっていませんが、今後数年のうちに声を上げる人が増えると、社会課題となることは想像できます。その時に、「洋服の青山」が就活生にとって「黒のリクルートスーツだけを売るお店」というイメージだと想起してもらえなくなるかもしれません。

 だからこそ、私たちはリクルートスーツ以外のスーツやビジネスカジュアルなどあらゆるビジネスウェアを取りそろえているお店だと認知してもらうことが重要になります。

 現在、「洋服の青山」の店舗では、お客様からのご要望があれば、リクルートウェアの相談も行っています。就活生に寄り添うことで、その後ビジネスパーソンとして働く時にビジネスウェアについての相談ができるサポーターとして「洋服の青山」が選ばれ続けることを目指しています。

──具体的にはどのようにして活動を広めてきましたか?

 まずは、活動に賛同し、一緒にアクションをしていただける企業を増やすことに力を入れてきました。プロジェクトに対する思いを企業に理解していただくために、一社ずつ連絡し、担当の方にオンラインミーティングでご説明することで、地道に賛同企業を増やしていきました。

 現在、30社を目標にしているのですが、26社・団体(2023年6月時点)が賛同してくださっています。

 賛同企業の中には、採用の合同説明会で「#きがえよう就活」サイトで開示している服装情報をスライドに差し込んだり、就活生に送るメールにプロジェクトに賛同している旨を記載いただいたりしている企業もあります。共創コミュニティからの発信については、コミュニティのSNSでの発信に加え、洋服の青山のSNSでの投稿や、イベントへの協賛、学生向けカンファレンスでの登壇、人事向け、学生向けのウェビナーなど様々な方法で実施しています。就活領域のKOL(キーオピニオンリーダー)によるSNSでのシェアや、青山商事からのプレスリリースはメディアの取材にもつながっています。

 また、賛同企業には、企業同士のミートアップをオンラインで度々行っています。就活生の最新動向や新卒採用を行う上での秘訣などを業界を超えて共有する場の提供を行っています。これにより、プロジェクトを通して賛同企業同士がつながりを持っていただける機会となっています。

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プロジェクト賛同企業のミートアップの様子

顧客から相談されるニーズに寄り添う接客改革

──同プロジェクトに対する反応にはどういったものがありましたか?

 まず当社でのケースですが、プロジェクト公開のタイミングですべての採用段階での服装指定を「自由」に変更し、その理由を開示しました。その結果、実際に面接に来られる方の2割ぐらいはリクルートスーツではない服装でいらっしゃるようになりました

 また、プロジェクトを通じてリクルートウェアを店頭でお買い求めのお客様への対応を変更したことでも、お客様から良い反応をいただけるようになりました。

 就活用スーツをお求めになる方には、黒のリクルートスーツのみをお勧めするのではなく、現在の就活の服装指定の実情をお伝えするように心がけています。加えて、店舗スタッフの接客時にはプロジェクトの賛同企業の採用段階ごとの服装指定とその理由を一覧表にまとめた接客ツールを使用しています。「この企業は服装自由ですから、たとえばこんな服がおすすめです」と紹介できるようにしました。

 これらの活動により、お客様のほうから「インターンでビジネスカジュアルと言われたのですが、どんな服装がいいですか」とご相談いただく場合や、就活の服装指定の実情を正確に公平に伝えていると感謝の言葉をいただくこともあります。

次のページ
重要なのは認識の共有 世代を超えて一体感を生むコツ

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。

 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/05 13:17 https://markezine.jp/article/detail/42799

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