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就活の「とりあえずスーツ」にあえて切り込む 青山商事に学ぶ“社会課題解決型”リブランディング施策


 近年、生活様式の急激な変化により、社会のニーズも以前と比べると劇的に変化した。そういった、変化に合わせて提供する事業の価値を変革できない企業は消費者の相手にされなくなってしまう。「洋服の青山」を運営する青山商事は世の中のニーズと自社の商品の未来のことを考え、同社主導で就活生の課題解決に向き合う「#きがえよう就活」プロジェクトを行っている。現在では、26社・団体が賛同するまでに拡大し、事業にも好影響が表れているという。同社のリブランディング推進室長を務める平松氏に本プロジェクトの設計と概要をうかがった。

青山商事が掲げる二つの戦略

──貴社では2022年7月に「#きがえよう就活」プロジェクトを開始して以来、企業と就活生の双方に取り組みの輪を大きく広げていると伺いました。今回は社会課題の解決とブランディングを両立する同プロジェクトのお話から、企業のブランディング戦略に必要な考え方を探れればと思います。まず、プロジェクトの設計に携わる平松様のご経歴について教えてください。

青山商事株式会社 リブランディング推進室長 平松 葉月氏
青山商事株式会社 リブランディング推進室長 平松 葉月氏

 元々はグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、通販カタログなどのデザイン制作をしていました。その後、ラウンドワン、家電メーカーのアクアなどで広告宣伝や販促といったマーケティングの領域に携わるようになり、幸楽苑ホールディングスでマーケティング部署の立ち上げや、経営戦略とマーケティング戦略の統合により業績回復を実現しました。

 青山商事には2019年10月の「リブランディング推進室」立ち上げ時に、副室長として入社し、2022年10月にリブランディング推進室長となりました。

──リブランディング推進室はどのような役割を担っているのでしょうか?

 同室では当社で主軸となるビジネスウェア事業の変革を目的としたリブランディングを進めていくことを役割としています。これまでは以下の二つを大きな軸として三年間の戦略に沿って実行してきました。

 一つ目が、足元の売上を向上させるための「マーケティングという概念」を社内に根付かせること。もう一つが、未来の売上につなげるためのリブランディングです。

 一年目は、外部コミュニケーションの変革。商品認知のアプローチや広告宣伝といった顧客接点となる部分を変えていきました。二年目は、商品を企画する手法の変革。外部のビジネスパーソンとの共創コミュニティを立ち上げ、その中でアイデアを共有し、商品の共創などを実施しました。三年目は、コロナ禍で現状は未着手となっていますが店舗の再設計を予定していました。

──リブランディングの背景にはどのような課題があったのでしょうか?

 「洋服の青山」の認知率はどのような市場調査でも80%近くあるにも関わらず、ビジネスウェアを買う時の想起率が低いことや、労働人口のボリュームゾーンである20代~40代の方々が当社の購買顧客全体の割合では低いという課題があり、早急にその世代に必要とされるブランドに変革することが必要と考えました。

 それらの課題に対する打ち手の一つとして、当社店舗で購入したことがない方、そもそも来店の経験がない方の抱える課題やニーズを理解するために、共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」を立ち上げました。外部のビジネスパーソンや学生と一緒に社会課題の解決に取り組むことで、ビジネスウェアを販売しているお店からビジネスパーソンに寄り添うブランドへと認知を変化させたいと思っています。

就活の暗黙知を“きがえて”変革

──#きがえよう就活プロジェクトの概要についてお聞かせください

 「#きがえよう就活」プロジェクトは、先述した共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」から生まれたプロジェクトの一つです。簡単にいえば、就活生の課題解決に向き合うことが目的です。

 最初のきっかけは、コミュニティでの活動を行っている際に、当時新卒一年目のコミュニティメンバーが発した「リクルートスーツを着た時に個性が死ぬように感じた」という声でした。

 それを受け、実際に3,000名ほどの就活生と、数十名の採用担当に対して、就活時の服装について調査を行ったところ、就活生は服装自由と言われても選考への影響が出る可能性を考えたり、私服で「浮く」ことに対しての不安から、とりあえずリクルートスーツを選んだりしている方が多いこと、企業側の採用担当者も服装自由とすることが就活生にとって困りごとになると思っている方が多くいることが判明しました。

就活時の服装について(シン・シゴト服ラボ調査)

 こういった課題を解決するためにプロジェクトが動き出しました。

──具体的にはどんなことを行いましたか?

 まず、同プロジェクトに賛同してくださる企業とその内定者にアンケートを実施しました。内定者には選考で実際に着用していた服装、企業側には指定していた服装とその理由を、複数ある選考の段階ごとに分けて聞いています。その結果を「#きがえよう就活プロジェクトサイト」に掲載することで選考時の服装を可視化し、就活生が服装で悩まない状態を目指しました。

 企業側が採用における選考時の服装指定を記載している場合、企業ごとに異なる意図や理由があると考えられます。

 ですが、ほどんどの場合は理由まで明記されていません。これが、就活生に企業側の意図が伝わらないといった問題を生んでいます。

 同プロジェクトを通して、企業と就活生の服装指定に関する認識のズレをなくすことで、就活生がスーツもスーツ以外も迷うことなく選べるようにする状態を作る。加えて、服装に限らず就活生が抱える、多くの暗黙の了解を「きがえて」変えていきたいと思っています。そんな意味を込めて、平仮名で「#きがえよう就活」という表記にしています。

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この記事の著者

土屋 典正(編集部)(ツチヤ ノリマサ)

法政大学法学部を卒業。新卒で人材派遣の会社にて営業職を経験し、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/05 13:17 https://markezine.jp/article/detail/42799

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