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クーポン利用率は手動ターゲティング時の約5.7倍に!AIで変わるカルビーのマーケティング

PDCAを三ヵ月周期で回すのが目標

――今回、AIを活用する過程で予想外に苦労された点があれば教えていただけますか。

 AI導入から成果が実感できるようになるまでに、実に一年近くの期間を要した点が挙げられます。2020年初頭には教師データの作成に着手していましたが、全店舗へのAIターゲティングの導入や、成果の検証に至ったのは2021年頃でした。

 なぜ一年もかかってしまったかというと、AIに分析を任せる前のデータ処理が予想以上に難しかったからです。ID-POSのデータ量は非常に大きいため、AIが扱えるレベルにまで圧縮する必要がありました。さらに、小売事業者との間でデータ連携のタイミングや形式について細かな調整が発生したことも時間を要した一因です。

 また、ターゲティング期間が長引くにつれて購買情報が古くなり、AIの予測精度が落ちるという問題もありました。物流コストの上昇による商品価格の変動や、コロナ禍における消費行動の変化など、市場環境が急速に変化する中で浮上した課題でした。現在はデータ受領から三ヵ月以内に対応できるような仕組みの構築を目指して取り組んでいます

アプリでのクーポン配信でもAI活用を検討

――AIによるターゲティングという新たな挑戦を経て、松永さんの展望をお聞かせください。

 カルビーでは、2019年より「DX推進委員会(※3)」を立ち上げ、DXを推進してきました。その活動に加え、社内向けイベント「カルビーDXカンファレンス」や営業部門への勉強会などを通じて、全社規模でDXマインドの醸成に取り組んでいきたいと思います。

※3 全社横断型のプロジェクトで、情報システムや生産、物流、営業、マーケティングなど、多岐にわたる部署のメンバーで構成されている

 また、レシートのみならずアプリでのクーポン提供を求める声が小売事業者やお客様から挙がっており、実装を検討しているところです。アプリクーポンのターゲティングにも、今回の取り組みで得た知見を活かしたいと思っています。そこでまずは、チーム全体のAIスキルの向上に努める所存です。

 「AIによる分析に特別なスキルは必要ないのでは?」と思われがちですが、そうではありません。AIが算出したターゲティング結果が妥当か否か。この判断をするためにも、担当者自身に統計値への理解など、関連知識が求められるのです。

 リテールサイエンス部のミッションは「お客様が不便に感じている部分を見つけ、デジタル技術を使ってそれを解決し、お客様の購買体験をより便利に変えていくこと」です。このミッションを果たすために、社内でAIを活用・分析できるメンバーを増やしていきたいと思っています。

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この記事の著者

宮野 圭(ミヤノ ケイ)

コンサルティングファームにてデータアナリティクスを通じた業務改革に従事する傍ら、ライターとしても活動。エンタメ領域やテクノロジー領域のメディアにて執筆経験あり。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/08/28 08:30 https://markezine.jp/article/detail/42946

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