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顧客を逃す四つのボトルネックとは?LTV向上の新フレームワーク「MAST」【お薦めの書籍】


 新規顧客の獲得が難しい現状を背景に、既存顧客との長期的な関係構築、すなわちLTVの向上に努める企業は多いのではないでしょうか。一方で、多様なマーケティングフレームワークが存在する中、LTVに特化した戦略のヒントや秘訣は少なく感じられます。本稿では、LTVを損ねる四つのボトルネックと、それらの解消法がわかる指南書を紹介します。

LTV向上のボトルネックとは

 今回紹介する書籍は『LTV(ライフタイムバリュー)の罠』。著者はデジタルマーケティング支援ツールなどを提供しているWACUL(ワカル)の代表取締役・垣内勇威氏です。

『LTV(ライフタイムバリュー)の罠』 垣内勇威(著) 日経BP 2,420円(税込)

 垣内氏は、2013年にWACULに入社し、2019年には産学連携型の研究所「WACUL Technology&Marketing Lab.」を設立しました。現在は、同所の所長および代表取締役として、マーケティングナレッジを世に広める活動をしています。

 本書の第一章では、LTV向上施策の失敗例をいくつか取り上げ、その背後にある共通の問題点を明らかにしています。第二章ではLTV向上のボトルネックを体系的に分類。第三章以降で「MAST」というフレームワークを中心に、ボトルネックの解消方法を詳しく解説しています。

 本書の冒頭で、垣内氏はプロ野球球団の例を用いて、企業の怠慢を次のように指摘します。

野球初心者が球場に行くには、大きな心理的障壁があります。どんな服装をしていけば良いのか?一人で行っても大丈夫か?〈中略〉このような初心者の心理を知らないのか、驚くことにプロ野球の各球団の公式サイトを見ても、初心者向けのコンテンツはほとんどありません。熱狂的なファンを有する、いわゆる「ファンビジネス」は、顧客への塩対応が目立ちます。なぜなら、わざわざ丁寧に解説しなくても、熱狂的なファンは自ら重箱の隅まで探し尽くしてくれるからです。(p.14)

 つまり垣内氏は、初心者やファンの潜在層を企業が知らず知らずのうちに遠ざけてしまっていることに警鐘を鳴らしているのです。この機会損失を解消するには、どうすれば良いのでしょうか。

部分的な改善アプローチがお勧め

 垣内氏は、カスタマージャーニー上で顧客との関係が途絶えがちなポイントを「LTVボトルネック」と定義し、一つひとつのボトルネックを解消する“部分改善アプローチ”を勧めています

 垣内氏によると、多くのマーケターがLTV向上の取り組みでは「部分的な改善」よりも「全体的な改善」を目指しがちとのこと。なぜなら、部分的な改善は往々にして目立たず、地味な仕事であることが多いからです。

たとえば、プロ野球球団のWebサイトに初心者向けのページを1枚追加しても、社内からの評価はぱっとしないでしょう〈中略〉企業の担当者からすれば、成否はともかくとして「やった感」のある派手な施策のほうが、自分の成果としてうたいやすく、出世にもつながります。(p.16~17)

 しかし「カスタマージャーニーの全体的な改善は、失敗する確率が高い」と垣内氏。顧客主導であるべきカスタマージャーニーを、企業側の意向で変えることは困難だからです。全体的な改善に取り組んだ結果、アプリの開発やブランドのリニューアルなど、大規模なプロジェクトが次々と生まれたとしても、真にカスタマージャーニーが改善できているかというと疑問が残ります。

 そこで、垣内氏はこの問題への解決策として、カスタマージャーニーにおける特定の障害点、すなわちLTVボトルネックに焦点を当てて、効率的かつコストを抑えて改善すべきだと提案。その上で、LTVボトルネックを類型化し、解消するための実践的フレームワーク「MAST(マスト)」を紹介します。

「大半のことは顧客に伝わってない」前提で

 MASTは「Meet(出会う)」「Attractive(引き付ける)」「Sense(検知する)」「Trade(商売する)」の頭文字から成る、垣内氏考案のフレームワークです。本稿では四つのうち、ボトルネックの解消が容易だという「Attractive」について紹介します。

 Attractiveは「引き付ける」という意味から「魅力的な商品の開発やサプライズ感のあるサービスを考える必要があるのか?」と思われそうですが、垣内氏が語っているのはもっとシンプルで実践的な提言です。つまり、多くの企業が自社の商品の魅力を顧客に十分に伝えきれていないことから「その魅力の伝え方に知恵を絞ろう」と提案しているのです。

 魅力を伝えきれていないケースにはいくつかの共通点があるといいます。その一つが、非対面でのコミュニケーションです。アプリやテレビCMといった、商材の特徴をインタラクティブに説明できない顧客接点、つまりセルフサービスチャネルでは「マーケターは、大半のことが顧客には伝わっていない前提に立つべき」と垣内氏。場合によっては、対面のコミュニケーションに切り替えることを勧めます。

 また対面であっても、接客方法が企業視点に立ち過ぎていないか振り返るよう促します。「プロとしての振る舞いが、かえってそっけなく感じることもある。あくまで顧客の視点に寄り添ってコミュニケーションしたほうが良い」とのことです。

 本稿では二章までの内容をお伝えしましたが、次章以降では、MASTの他の要素や改善手法、顧客調査の方法、KPIの策定方法なども紹介しています。LTVの向上に真剣に取り組もうと考えているマーケターの方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

本記事は日経BPからの献本に基づいて記事作成しております

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この記事の著者

宮田 浩平(編集部)(ミヤタ コウヘイ)

MarkeZine編集部。香川県出身。2016年に時事通信社入社、広島支社、岐阜支局で勤務。2019年から広告・マーケティングの専門メディアで編集者。主にPR・ブランディングやプロモーション領域の取材を担当。2022年5月から現職。企業のサステナブルやDE&Iを軸にした取り組みに興味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/26 10:21 https://markezine.jp/article/detail/43100

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