議論から見えてきた、リテールメディアの伸ばし方
望月:メディア化していかない背景には、メディア事業に携わった人材がメディア運営に関わっていないことが挙げられます。そのため、どのようにトラフィックを作るのか、どのようなコンテンツがあればいいのかという話になりにくく、とりあえず目先の広告収益を狙ってしまう。
それよりも人気商品のランキングやおすすめ商品を紹介するコンテンツなど、リテールメディアやアプリとして成立するものを用意するべきだと思います。
加えて、POSデータの活用法もリテールメディア活用を考える上では重要です。POSデータはオフラインで得られたものですが、それを広告IDやユーザーIDといったオンライン上のデータとつなぎこむことで、広告やコンテンツに接触したグループのうち購買にどれだけ貢献したかが見えてきます。もちろんデータの変換作業が必要になりますが、広告の効果がわかるようになるのは革命的だと思います。

簗島:ほとんどのメーカーはオフラインの売上が大きいので、とても知りたいデータですよね。小売としても明らかにしたいとは思っているはずですが、まだデータが統合できていないのが現状ですよね。
それだけ、リテールメディアの領域はチャレンジングでおもしろいとも言えます。お客様にどういう情報を届けてメディアを利用してもらうかを考えコンテンツや広告を展開することで、いい循環を回していけるので。
リテールメディアはターニングポイントに来ている
簗島:現状のリテールメディアがコンテンツより先に広告の視点で語られてしまうのはなぜだと思いますか。
望月:小売にとってWebサイトやアプリがコストとして見られてしまっていたのが大きな理由の一つです。リテールメディアに対して人やお金を投資するという考え方がなく、海外では先行していたものの魅力が伝わっていませんでした。
リテールメディアというキーワードが出てきたことでその重要性が高まってきたわけですが、小売業のリテールメディア活用は今ターニングポイントに来ていると思います。これまで通りの運営で行くのか、コンテンツをきちんと用意して人が集まる運営をするのか。
簗島:データ活用の観点で見ても、コンテンツを用意して人が集まるメディアにするメリットは大きいです。現状小売企業が持っているPOSデータは魅力的である一方、インターネット広告の世界で言えばコンバージョンのデータがあるだけの状態です。
顧客のことを捉えるには、その手前のサイト来訪などファネルでいう認知から興味、関心、検討というアッパーファネルからミドルファネルまでの情報が必要であり、リテールメディアにはその情報を補完できる可能性があります。
また、POSデータを活用した広告では、元々見込み度の高いターゲットにしかアプローチできません。広告収益を増やしていくためにも、あらゆるコンテンツを用意することは重要です。