低燃費・エコ時代の中で、いかにJeepをブランディングするか
それでは、実際に拡張性を実現したオウンドメディア事例を見ていこう。宍戸氏が紹介するのが、Qeticが通算10年以上、運営を支援しているJeepのオウンドメディア「RealStyle by Jeep」だ。
Qeticが支援を開始した2013年当時は「低燃費・エコ」の時代で、コンパクトカーが世間的には注目されていた。そうした時代性と逆行する大型車のJeepをいかにして訴求するか。宍戸氏は、オウンドメディアの力を活用して潜在顧客との接点を増やす方針を打ち出した。
初めのステップとして、Jeepのオーナーやターゲット層のライフスタイルやニーズを調査した。その結果、Jeepオーナーは車が好きで、かつ確固たるライフスタイルを持っていたり、趣味を大切にしていたりする人が比較的多いことがわかったという。そこで、RealStyle by JeepではJeepオーナーの話を通じ、「Jeepを選ぶことで人生がどう豊かになるか」を読者にイメージしてもらえるコンテンツを発信することにした。
具体的には、初年度はSUV(※)が好きで、特定の趣味を持つ人などに焦点を当てて、彼らに役立つ情報を発信していった。
※Sport Utility Vehicleの略。アウトドアレジャーやキャンプなどの荷物を積んだり、整備されていない道路を走行したりする時に適した車種
「2年目に入ると、Jeepオーナーの傾向により寄せた趣味コンテンツを増やしていきました。たとえば、Jeepオーナーの方々はキャンプの他、ウィンタースポーツやマリンスポーツなどを趣味に持つ人が多いことが調査の結果からもわかっていました。そこで、そうしたアウトドア関連のコンテンツも積極的に発信することで、Jeepがいかにアウトドアと親和性の高い自動車かをより意識してもらえる、と考えました」(宍戸氏)
ゴールは「コミュニティの活性化」
3年目には、Jeepのオーナーや潜在層向けの体験型イベントを企画。たとえば、Jeepをスキー場で走らせたりしたのだ。また、オーナーや潜在層が彼らの家族や仲間たちと“一緒に参加したくなる”イベントにすることで、コミュニティの活性化を狙った。さらに、他のブランドとのコラボレーションも3年目から徐々に増えていったという。
「支援当初から考えていたのは、単に消費行動を促すのではなく、RealStyle by Jeepのコミュニティを活性化させることでした。つまり、『Jeepに乗るとこんなに楽しいコミュニティ活動に参加ができるんだ』と思っていただけることを目指したのです」(宍戸氏)
そのため、最初の3年間は潜在顧客との接点を増やしつつ、「ゆくゆくはコミュニティを活性化させること」を最重要項目に据えてコミュニケーション設計したという。その結果、今ではオウンドメディアのコンテンツが試乗会や新製品発表など、Jeep購入の場などでも有益に機能しているという。