ShopifyをCRMやコミュニケーションの場にも活用
河野:Shopifyは、ECプラットフォームとして認知されていると思います。しかし実際には、多くのマーケターの皆さんには「EC以外に活用が多くされている」と思います。お二人はどのような使い方をされていますか。
北山:土屋鞄製造所はShopifyで物販を行っているのですが、重視しているのがCMSとしての活用です。この部分が充実していれば、ブランドとして伝えたい部分のメッセージを簡単につくることが出来ます。また、Shopify POSを使うことでWebの顧客と実店舗の顧客情報を一括で管理ができるため、CRMが行いやすいことは非常にありがたく感じています。これにより、他のECカートと違い多大なコストをかけずに顧客情報の管理が出来る上に、効果的な施策が容易に行えるようになることも魅力だと思います。
西田:我々のShopifyの使い方は、ECプラットフォームというよりは「コミュニケーションプラットフォーム」に近いと思っています。
「MOONRAKERS」というアパレルプロジェクトは、先端技術が使われた素材で開発した商品を展開しているわけですが、そもそもはクラウドファンディングを活用したテストマーケティングから始まっています。消費者の声を集め、それを商品開発に生かすのが狙いでした。
ただ、クラウドファンディングの場合、ユーザーが「これ、いいな」と思ってもすぐに購入ができません。そこで簡単にECサイトが作成可能なShopifyを利用することにしたのですが、使用していく中で単なる販売サイトにとどまらず、顧客とのコミュニケーションの場へと形を変えていきました。
現在、アパレル業界は透明性の低さにより多くの課題を抱えていますが、それらの課題をShopify活用による顧客コミュニケーションを通じて解決していきたいと考えています。
単なる物販ではなく、私達が何をしているのかを知ってもらう。その延長線上で商品を購入してもらい、使用した感想をフィードバックしていただく。これがMOONRAKERSのShopifyの使い方の特徴だと思います。
「売るだけ」は通用しない ECの枠を超えた「ブランドプラットフォーム」へ
河野:Shopifyは元々、物販のサポートから始まったものでしたが、ECが当たり前になった現在では、物を売るだけのビジネスが成り立たなくなってきていると思います。お二人のお話からも、ユーザーとコミュニケーションを取る場としていかに機能させるかが重要になっていると感じました。
加えて、昨今はファーストパーティデータやIDの取り扱いが非常に重視されています。ですが、これらの管理プラットフォームを導入しようとすると多大なコストや手間がかかってしまいます。Shopifyは、機能がまとまっていることで、コストや手間を大幅に削減するでき、ECプラットフォームとしても活用できるのが大きな特徴ですね。
Shopifyは従来のEC以上に事業者がコマース全般に関する業務をより効率的かつ効果的に行えるようにするために数百以上もの新機能やアップデートのリリースを「Shopify Editions」として年2回発表しています。2023年のShopify Editions Summer '23の発表ではAIを活用したコマースアシストタントである「Sidekick」が注目を集めました。
河野:これは、対話形式でウェブサイトの更新や、デザインテイストが変更できる他、CRMやID管理、クリエイティブの紐づけなども可能になるものです。それらのすべてがドラッグ&ドロップで操作できるようになりました。AI活用はカスタマーサポートの自動返信やメールマガジンの制作サポートにもおよんでいます。ECプラットフォームを超えた「ブランドプラットフォーム」になりつつあると考えています。