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売る時の安心感も“売る以外”の業務効率化も実現 土屋鞄とMOONRAKERSのShopify活用法

 ECサイトの隆盛により、業界を問わずEC販売の競争が激化している。そんな中、コマースプラットフォーム「Shopify」は、世界175ヵ国以上で起業家から大手企業まであらゆる規模の事業者に導入されている。Shopifyの初代エバンジェリストでもあるFRACTAで代表取締役を務める河野 貴信氏をモデレータに招き、東レグループで先端素材アパレルD2Cプロジェクト「MOONRAKERS」を展開する西田 誠氏と、EC販売とリアル店舗での連携に定評がある土屋鞄製造所の北山 浩氏がパネルディスカッションを行い、Shopify活用の最新事例を説明した。

ShopifyをCRMやコミュニケーションの場にも活用

河野:Shopifyは、ECプラットフォームとして認知されていると思います。しかし実際には、多くのマーケターの皆さんには「EC以外に活用が多くされている」と思います。お二人はどのような使い方をされていますか。

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(写真左)株式会社FRACTA 代表取締役 河野 貴信氏 Shopifyの初代エバンジェリスト
(写真中央)株式会社土屋鞄製造所 顧客体験戦略室 室長 北山 浩氏 Shopify Plusの構築運営支援や、アドバイザリーの取り組みを行う
(写真右)ディプロモード株式会社 部長 西田 誠氏 東レグループが行う先端技術商品開発D2Cプロジェクト「MOONRAKERS」の代表も務める

北山:土屋鞄製造所はShopifyで物販を行っているのですが、重視しているのがCMSとしての活用です。この部分が充実していれば、ブランドとして伝えたい部分のメッセージを簡単につくることが出来ます。また、Shopify POSを使うことでWebの顧客と実店舗の顧客情報を一括で管理ができるため、CRMが行いやすいことは非常にありがたく感じています。これにより、他のECカートと違い多大なコストをかけずに顧客情報の管理が出来る上に、効果的な施策が容易に行えるようになることも魅力だと思います。

西田:我々のShopifyの使い方は、ECプラットフォームというよりは「コミュニケーションプラットフォーム」に近いと思っています。

「MOONRAKERS」というアパレルプロジェクトは、先端技術が使われた素材で開発した商品を展開しているわけですが、そもそもはクラウドファンディングを活用したテストマーケティングから始まっています。消費者の声を集め、それを商品開発に生かすのが狙いでした

 ただ、クラウドファンディングの場合、ユーザーが「これ、いいな」と思ってもすぐに購入ができません。そこで簡単にECサイトが作成可能なShopifyを利用することにしたのですが、使用していく中で単なる販売サイトにとどまらず、顧客とのコミュニケーションの場へと形を変えていきました。

 現在、アパレル業界は透明性の低さにより多くの課題を抱えていますが、それらの課題をShopify活用による顧客コミュニケーションを通じて解決していきたいと考えています。

 単なる物販ではなく、私達が何をしているのかを知ってもらう。その延長線上で商品を購入してもらい、使用した感想をフィードバックしていただく。これがMOONRAKERSのShopifyの使い方の特徴だと思います。

「売るだけ」は通用しない ECの枠を超えた「ブランドプラットフォーム」へ

河野:Shopifyは元々、物販のサポートから始まったものでしたが、ECが当たり前になった現在では、物を売るだけのビジネスが成り立たなくなってきていると思います。お二人のお話からも、ユーザーとコミュニケーションを取る場としていかに機能させるかが重要になっていると感じました。

 加えて、昨今はファーストパーティデータやIDの取り扱いが非常に重視されています。ですが、これらの管理プラットフォームを導入しようとすると多大なコストや手間がかかってしまいます。Shopifyは、機能がまとまっていることで、コストや手間を大幅に削減するでき、ECプラットフォームとしても活用できるのが大きな特徴ですね。

 Shopifyは従来のEC以上に事業者がコマース全般に関する業務をより効率的かつ効果的に行えるようにするために数百以上もの新機能やアップデートのリリースを「Shopify Editions」として年2回発表しています。2023年のShopify Editions Summer '23の発表ではAIを活用したコマースアシストタントである「Sidekick」が注目を集めました。

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河野:これは、対話形式でウェブサイトの更新や、デザインテイストが変更できる他、CRMやID管理、クリエイティブの紐づけなども可能になるものです。それらのすべてがドラッグ&ドロップで操作できるようになりました。AI活用はカスタマーサポートの自動返信やメールマガジンの制作サポートにもおよんでいます。ECプラットフォームを超えた「ブランドプラットフォーム」になりつつあると考えています

急なアクセス増加による負荷を回避 本業への集中を生む仕組みに

河野:Shopifyを使ったマーケティング活動での成果として、「ダウンタイムがなくなった」とか「コストと時間改善された」という話をよく聞きます。お二人の所では実際どのような改善が見られましたか?

北山:サーバーが落ちないという安心感により、サーバーの枠を広げるなどの事前準備を行う必要がなく、負荷が減ったことが大きいと感じています。弊社では最近、レザーのアップルウォッチバンドが好評で、再販時にはアクセスが集中してサーバーに負荷がかかる可能性があります。ところが、Shopifyではそういった際もサーバーの心配をする必要がなく、基本的な部分はShopifyが自動で調整してくれるので運用側としては楽になりましたね。

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河野:支援側にとってもブランド側にとっても、サーバーが止まる恐怖は強くありますよね。特に、キャンペーン時は多くの方に来てほしいからこそサーバーの心配をしたくないというのはどのブランドにおいてもある気持ちだと思います。

 Shopifyは、急に商品がテレビで紹介されるといったことがあってもサーバーが落ちることはないので、安心感を持って運用できる点は特徴的だと思います。

西田:当社の場合は、D2Cの知見が一切ない状態でのスタートだったこともあり、そもそもShopifyがなければプロジェクト自体が始められなかったと思います。フォーマットがあり、それを使えば素人でもECサイトが作れるという点は、スタート時の心理的なハードルを大きく下げてくれました

 また運用面でも、受注後に提携倉庫と自動で連携してくれるシステムがあります。おかげで、誰かが休みの日でもバックヤード的なサポートをしてもらえるため、当社のような数名で推進するプロジェクトにとっては本当にありがたいです。このサポートのおかげで少人数でも本当にやるべきことに集中ができています。当社は「開発」と「お客様の声を聞く」に非常に力を入れているのですが、そういったことが可能なのも、Shopifyのサポートシステムが充実しているおかげだと感じています。

河野:どの企業にとっても新しい事業を始める際には、限られた予算やリソースの中で効果を最大限に出す必要があると思います。そういった悩みを抱える方にとってShopifyは、コスト面でも仕組みの面でも本業に集中するためのサービスを用意していることが特徴として挙がります。マーケターや事業担当者がすべきことに集中できる環境を作るプラットフォームだと思います。

新たな機能でパーソナライズされた対応を仕組化 インナーブランディング推進へ

河野:最近ではShopifyでどのような活用を検討しているのでしょうか?

西田:まずグループ会社に対する社販やファンの方に向けて特別な対応を行う際に活用していきたいと考えています。Shopifyは、ShopifyやShopifyパートナーが補完的な機能をアプリ開発して提供してくれる仕組みがあるため、新たな機能からよりパーソナライズした対応の設計などが非常に楽になると考えています。

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西田:我々が属する東レグループは素材開発に力を入れているメーカーなので、社内の技術者達は「開発した商品を自分で使いながら、次の開発へとフィードバックしたい」という思いがあります。ですが、これまでは自分達の素材がどこでどう使われているかといった情報の共有も少なく、自社商品購入のハードルが高いという問題がありました。

 その部分はMOONRAKERSができたことで買いやすくなったと非常に感謝されるのですが、そうなるとよりサービスを向上させたくなるのが私の癖で(笑)。技術者達が最終商品をより手に取りやすくするための社販などの仕組み作りがあればより良いなと考えたりしています。Shopifyを使って最優先で行いたい施策ですね。

河野:Shopifyはそうした仕組みが非常に簡単に作れて管理・運用が楽という点でも大変喜ばれています。最近ではグループ内企業や互いにリスペクトする企業同士が福利厚生も兼ねて、従来の社販のように顧客向けとは異なる販売をする動きもありますね。これはインナーブランディングの観点でとても重要な取り組みだと感じています。

連携のしやすさを活かしてアパレル業界の問題解決にも注力

北山:今回、私もShopify Editions Summer '23のアップデートを確認したところ、多くのページで「AI」の表記が目立っているように感じました。当社では現在、Shopify上でこれらの活用によるさらなる業務効率化に向けて効果検証を行っている最中です。

 他にもShopifyでは、従来は高価とされていたMAツールを機能の一つとして非常に低価格・簡単・即時に利用できるよう提供しています。また、豊富なAPIにより他の多くのサービスとの連携ができるようになっています。多くのサービスと連携できるからこそ、日々Shopifyを使って何ができて、何ができないのかといった調査を日々行っています。

河野:Shopifyは外部のサービスとエコシステム構築されているので、多くの有効なサービスとつなげられることや、ノーコードで実行できるツールも数多く実装されていることがメリットだと思います。そしてそれらを組み合せることで、顧客情報の収集から適切にコミュニケーションを取るといったことまで簡単にできるようになっています。

API連携で外部との連携が可能

河野:北山さんは、AI活用に力を入れていきたいと話されていましたが、西田さんは今後の展望も教えていただけますか?

西田:先述の「ファッション業界の透明性の低さ」を、最新の技術を取り入れることでどのように改善できるか考えています。その一つとしてブロックチェーン技術を使った事実証明が挙げられます。

 すでに欧州ではトレイサビリティーに関する法整備準備も進みつつあり、今後は服の製造国だけではなく素材の生産地までユーザーに開示することが当たり前になってきます。その際に、情報が間違いないものか第三者的に証明できるのがブロックチェーン技術です。

 現状は消費者が素材や服の産地を意識することは少ないと思います。しかし、食品だとみなさんそこは気にされますよね。服の製造における透明性の低さは人権問題や労働環境問題がはびこる温床だと考えていて、本来誰もが誰かが苦しみながら作られた服を着たくはないはずですが、透明性が低いことで着る方もつい目をつぶってしまうこともあるように感じています。

 私達は服も食品のようにトレイサビリティーが当然であるという風潮に変革していくことを目標としています。服の在り方を変える透明性の高い世界──あらゆる技術との親和性があるShopifyであれば、こうした世界観を近々に実現することも可能だと考えていて、現在急ピッチでPoC(実証化検証)の準備を進めているところです。
 

 河野:ありがとうございます。「MOONRAKERS」のプロジェクトには、Shopifyの持つビジョンとリンクしている部分がありますね。今後、Shopifyでも様々な仕組みをオープン化する機能に力を入れていく予定だと聞いているので、私も楽しみにしています。

やりたいことを明確にしてShopifyの活用方法を探す

河野:それでは今後、Shopifyの利用を検討してくださっている方へのアドバイスをお願いします。

北山:ここまでShopifyの良い部分ばかりをご説明してきましたが、「Shopifyは魔法のツールではない」ことをお伝えしておきたいと思います。Shopifyは、カートこそ共通のものですが、装飾の仕方次第で千差万別になるストアです。言い換えると、この組み合わせが上手くいかないことには機能を発揮できません。だからこそ、パートナーと組むことでShopifyを使って“やりたいこと“を明確にしながら実装を進めることが重要になると思います。

西田:私も北山さんの意見に全く同感です。しかしその前提を踏まえた上で、あえて「Shopifyは魔法のツールである」と表現したいと思います。それは完全に素人の状態で始めた我々にとっては、特に初期段階でShopifyの存在が非常にありがたかったからです。

 始めは我々もShopifyを通常のECとしてイメージしていました。しかし、活用していくうちにユーザーとのコミュニケーションのためのメインツールに進化していきました。コミュニケーションツールとして使うことで、ユーザーのほうから新しいアイデアをもらうことだってできるようになります。このように、使っていく中て気づくことがとても多いサービスがShopifyだと私は思っています。

 Shopifyは導入に大きな費用がかかるわけでもないので、これから始められる方はぜひまずは軽い気持ちでその「魔法」に触れてもらいたいと思います。

河野:現在、まだShopifyを「SaaSのECツール」と認識している方も少なくないと思います。ですがお二人からもあったように、Shopifyは現在、ブランドとユーザーの懸け橋となるようなツールに進化しています。さらには、Shopify Plusという上位プランでは、無制限に管理者アカウントを作れるなど、CMSとしての活用にも大いに役立つものになっています。まずは是非気軽にご相談いただければと思います。

Shopifyの活用事例をもっと知りたい方におすすめ!

 Shopifyには興味があるけれど、どのくらい効果があるのか、また導入における時間やコストのハードルなどについてもっと知りたい方のために、事業者様による活用事例を公開しています。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Shopify Japan株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/19 10:00 https://markezine.jp/article/detail/43549