2台の車が異なるスピードで走っている状態
――グローバル企業と比較して、日系企業のCXやDXに関する取り組みは進んでいるといえるでしょうか。所感を教えてください。
日系企業には二つの特徴があると思っています。一つ目の特徴は、顧客データの一元化には非常に重きを置いていることです。世界的に見ても、CRMプラットフォームを導入している日系企業の割合は非常に大きいでしょう。一方で、CXの全体的な取り組みのプライオリティは低いと感じられます。

二つ目の特徴は、本社と海外拠点でCX、DXに関する取り組みのスピードには差があることです。私はこれまでダイキンやブリヂストン、ホンダなどのグローバル企業を支援したことがありますが、自社の海外拠点に比べて日本本社のほうが歩みが遅いと感じました。普通は、本社も海外拠点も同じスピードでDXやCXが進むものです。しかし、日系企業はまるで、“2台の車が異なるスピードで走っている”そんな印象です。
中国企業がdisruptionをもたらす
――グローバル企業と比肩しようと努めるマーケターに向けて、アドバイスをお願いします。
グローバルに事業を展開する企業のマーケターなら、中国企業の今後の動向は注視しておくと良いでしょう。
我々のクライアント企業にも中国の多国籍企業はいますが、中国企業は今や、日本や欧米と比べて1,000倍近いスピードで顧客データを収集しています。中国企業の成長は、我々の市場においてもdisruptionをもたらす──そう睨んでいます。
そのため、日本のマーケターにとっても中国企業はかなりの強敵であり、マーケットシェアの奪い合いは避けられないでしょう。
――最後に、SAPの今後の展望を教えてください。
私は「SAPなきCXは存在しない」と考えます。つまり、SAPが提供する環境はCX改善には欠かせないのです。その上で、長きにわたるCX・CRM領域での経験を基に、今後も適切な投資を行い、業界のリーダーシップを発揮していく所存です。