SNS調査とアンケート調査を組み合わせ、より深い洞察を得る
必需品とされる商品の「値上げ」に対して、嗜好品的な側面もある「オタ活」にも注目。趣味を満喫する活動を示すものだが、インフレ傾向にあってもポジティブな意見は、「この自己投資は高価ではあるが、それに見合った価値がある」との声が見られた。ネガティブな意見には、「投資したが、高価に感じる」との声が上がっている。これらの意見については、どちらの顧客に向き合うかが論点になると五十嵐氏は説明する。
オタ活に関連する言葉として「VTuber」も上がってきた。このような比較的新しい言葉や概念がマーケターにとって身近でなくても、ビジネスにおいてどのように関連してくるのかを考えなければ機会を損失するリスクがある。「見える化エンジン」では、AIを用いてキーワードの関連情報を収集し、アイデア創出を支援する。また「温泉」といった一般的なキーワードでも、AIによる分析で新たな着眼点を得られるという。
「分析してキーワードに気づいて終わりではなく、そこをから関連テーマに発想を広げることが重要です」(五十嵐氏)
しかし、SNSだけでは瞬間の言及が中心となり、背景や動機などの深い部分をとらえることが難しい。この問題を補完するために、ネットアンケートや生活者調査を組み合わせ、より深い示唆を得るのがおすすめだ。アンケートも単に顧客の声を聞く「リスニング」だけでなく、詳しい情報を引き出す「アスキング」を行うことが大切だという。
たとえばプラスアルファ・コンサルティングでは「あなたの趣味について教えてください」という設問に加えて、「なぜ始めたのですか?」と「始めた理由」を尋ねたところ、「インフレ対策のために資産運用を始めた」「値上げラッシュだから節約料理を始めた」「編み物を始めた理由は動画でサイト知ったから」「SNSを見て居酒屋巡りを始めた」など、趣味のきっかけには物価高騰やオンライン活動があることがわかったという。
ギャップを探る場合は社員の声も聞く
続いては、企業の持つ強みと市場の声との間の最適なバランスを求める視点である「ギャップ」のとらえ方についてだ。ギャップを調査する場合、「簡易的なもので構わないので社員の意識調査を実施してほしい」と五十嵐氏は語る。社員が考える商品の強みや価値と、SNSやアンケートから得た顧客が感じる体験価値とすり合わせることでギャップが見えてくる。
たとえば、企業が商品について最も伝えたかった価値は「透明感」や「長持ち」だったが、リリース後に消費者が言及する体験価値は「ツヤ」だったというように、ギャップが浮き彫りとなる。ギャップを発見した企業は「ツヤも実は我々の価値の一つである」という新たな認識を抱いたり、「なぜ透明感が受け入れられなかったのか?」と考察したりできる。
DXの進展でテキストマイニングを行う組織が拡大中
プラスアルファ・コンサルティングでは、過去12年間にわたり定性データや顧客の声活用の支援をしてきた。
「顧客の接点がダイレクトに変わってきた業界で、顧客の声からの企業活動を見直したいという声が上がっています」(五十嵐氏)
部門もマーケティングだけでなく、お客様相談室、そしてR&Dと呼ばれる商品企画や開発部門が増加した。利用しているデータはマーケティング部門では従来のリサーチやインタビューに加え、コールログや問い合わせデータの利用が増加傾向にある。一方、お客様相談室ではアンケートを活用して能動的に声を収集する動きが見られる。このように部門横断で複数のソースを活用することが定着してきている。