最年少リーダーとして直面した壁
──キャリアチェンジの際に重視されていることはありますか?
キャリアデザインの三つの輪(※)のうち、私が起点としているのは「Will(やりたいこと)」です。私にとってのやりたいことは社会課題の解決ですから、ある課題に対して自分がやれること、やりたいことを考えています。
※「Must(やるべきこと)」「Can(やれること)」「Will(やりたいこと)」を示す図のこと

──リーダーの経験も豊富な工藤さんに、マネジメントのお話もうかがいたいです。リーダーとして挫折を味わったことはありますか?
30歳を過ぎた頃、資生堂で当時最年少のリーダーを務めたときでしょうか。部下にあたるメンバー全員が年上で、グローバルな組織のため国籍もバラバラでした。ちょうど新社長の方針によって年功序列が撤廃され、大幅な体制変更が生じた時期でしたから、私が指示を出しても耳を傾けてもらえなくて。「あなたは誰ですか?」「なぜその指示を聞かなければならないのですか?」という雰囲気が非常に辛かったです。
──その挫折をどのように乗り越えたのでしょうか?
課題の分離が得意なので、問題の本質に目を向けていました。自分を認めてもらうことは二の次。「メンバーはブランドのことが好きだから、ブランドの求心力をまずは高めよう」と考えたわけです。私の強みである戦略プランニングでブランドの新しい指針を皆と話し合い、まとめた指針が採用されるよう経営陣と徹底的に戦いました。
新しい指針がこれまでのものと大きく異なっていたため、経営会議では様々な人からリスクを指摘されました。ただ、最年少のリーダーに期待されていることは「変革」や「挑戦」だとも思っていて。めげずに戦っていたらその姿にメンバーも共感してくれて、結果的に認めてもらうことができました。
企業の内外で人々の体温を上げるために
──最後に、スープストックトーキョーでチャレンジしたいことをお話しください。
「世の中の体温をあげる」という理念の下、私は一人でも多くの体温を上げることと、今いるお客様の体温をさらに上げること、言い換えると広げる/深める取り組みを進めていきます。
実は私、数年間スープストックトーキョーの休眠客だったんです。利用していた頃は「ちょっとおしゃれなスープ屋さん」くらいの解像度でブランドを捉えていて、価値を深く理解せぬまま出産を機に休眠してしまい、戻って来るのに時間がかかりました。素材や産地へのこだわり、高いクリエイティビティなど、まだ知られていない魅力が数多くあるため、様々な方法を駆使してファンを増やしていきたいと思います。
当社で働いているメンバーも“世の中”の一員と言えます。働く人の体温を上げるための活動にも取り組むつもりです。やらされている感を生まず、自分の発意で仕事に取り組むことができる組織には高いポテンシャルがあると考えています。実際、メンバーの個人的な思いから始まった事業もありますから、取締役としては皆がチャンスを感じられる職場にしていきたいです。その努力なしに、真の事業成長は目指せないと思います。