AIとどのように共存していくといいですか?
藤平:少し話題を変えまして、たとえば獲得系のコンバージョンにすごく強いLPにおいてはAIが強い/どんどん使えるイメージがあるんですが、人の心を動かすことに重きを置いた企業広告の類のクリエイティブでも今のAIはワークするんでしょうか?
深津:いけると思いますよ。
藤平:本当にどんどん人間のやることがなくなるじゃないですか(笑)。
深津:糸井重里語録みたいものをChatGPT4に1~2冊学習させてみたら面白そうですよね。
藤平: TCC賞というコピーのアワードがありますが、TCCの作品を30年分くらい読み込んだAIみたいなものができたらと思うと恐ろしいです。
深津:たとえば、そういうものも全然作れますよ。そのAIの作ったものを世に出すかどうかはともかく、実証実験としては良いのではと思います。
藤平:そのAIを僕のチームメンバーにしたいです。そういうAIとはどう「with」の関係を作っていくのがいいのでしょうか。

深津:2つやり方があります。そのAIに良いものをアウトプットさせるというやり方が1つ。もう1つは、自分で考えた渾身のコピーをそのAIに採点してもらうというやり方です。
藤平:なるほど、やはり、そっち側(後者)もあるんですね(笑)。
深津:AIのほうが能力はありますからね。事故率もそっちのほうが低いです。AIに頼れば、ジェンダー問題などで広告が炎上するといったリスクも随分低くなるはずです。
実践!ChatGPT4という“部下”をどう使うといいのか?
藤平:たとえば、なにかしらのコピーライティングをお願いする場合、ChatGPT4を使うとなるとどういうワークになるんでしょうか?
深津:どこかの街に行きたくなるようなコピーを、作ってみましょうか。どこにします?
藤平:じゃあ、軽井沢で。ちょうど今月行く予定があって。

深津:AIでコピーを作ろうとする時、「軽井沢に行きたくなるようなコピーを作って下さい」くらいのプロンプトで指示する人、きっと多いですよね。
藤平:まさに、興味本位でこうやってしまいそうです。
深津:これじゃ足りないんです。基本的に、言語モデルは手前にあるテキスト情報をもとに後ろに続くテキストを計算する機械です。なので、手前に情報や条件を入れると、後に続くテキストの質が上がります。
藤平:なるほど、なるほど。インプット大事。
深津:たとえば、「広告賞を獲るようなコピーが満たすべき要件を列挙して下さい」という指示を先に入れてみましょう。すると、創造性、感情的、共鳴、独自性……など色々出てきますね。
藤平:そもそも、最初からコピーを書かせようとしないわけですね。
深津:書かせないです。こんなに初手では書かせない。手前の準備をひたすら丁寧に行います。「軽井沢の魅力を列挙して下さい」「こんな人を顧客と設定して、その人たちに効きそうな軽井沢の訴求ポイントとその理由を列挙して下さい」みたいに前段階を重ねていく感じです。
これって、優秀なマーケターやクリエイターが普段やっていることと、そう変わらないんじゃないですかね。皆さん、軽井沢のPRをするとなったら、軽井沢についてリサーチしたり、現地に行ってみたりしますよね。
藤平:たしかにそうですね、優秀と言われるプランナーやクリエイターほどこういったことをしていますし、ここからの発見や示唆が魅力的であることが多いです。
深津:そういう下準備をちゃんとやるんです。あとは、こういう風にAIを使えるようになると、使う側の人間もこのプロセスで物事を考えられるようになります。そうなると、仮にAIを使わないとしても、自分の普段の仕事もすごく速くなると思うんです。
藤平:この指示の仕方を見ていると、クリエイティブ、今回の場合はコピーを知っている人間のほうが、AIに上手くディレクションしたり、やり取りしたりできるだろうなと感じます。
深津:それは絶対にそうですね。最終的にいいコピーをAIから引き出せるのは、いいコピーライターだと思いますよ。
藤平:やってみたくなりました。そして、ちょっとだけ希望が見えてきました。
