※本記事は、2023年10月刊行の『MarkeZine』(雑誌)95号に掲載したものです
【特集】本格AI時代到来 広告・マーケティング業界の行方
─ AI時代の来し方行く末 ビッグウェーブを乗りこなすヒント
─ 生成系AIで検索連動型広告はどう変わる? プラットフォーマーとマーケターの現在地
─ 独自のデータを持っていることが生成AI活用の差別化になる
─ AIで広告クリエイティブの制作はどう変わる?サイバーエージェントに聞く、変化と未来
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:AIが最大限の力を発揮できるよう環境をいかに構築するか(本記事)
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:生成AIにできること、クリエイターにしかできないことは?
─ ChatGPTで話題沸騰となった2023年、今日までに見定めたAI活用のリアルな現在地
AIによる効率化・最適化の恩恵を受けるには
──この1年ほどAI関連の話題が急沸騰しています。鈴木さんはこの様子をどのようにご覧になっていますか?
Metaの立場からお話しさせていただきますと、特に生成AIに対する注目が昨今高まっていますが、Metaではこうした流れになる前からAIの分野においてはかなり先駆けて投資を行ってきました。FacebookやInstagramのアルゴリズムはもちろん、そのプラットフォーム上でご提供している広告事業にもAIを活用する流れは以前からあり、また2013年にはAI研究のラボ「Fundamental AI Research(以下FAIR、旧称Facebook AI Research)」を設立しています。FAIRでは、AIのゴッド・ファーザーとも呼ばれるMetaのチーフAIサイエンティストのヤン・ルカンを中心に、AI活用に関する基礎的な研究を行っており、大規模な投資を続けてきました。
こうした経緯もあり、現在のこのAIに対する注目の高まりは我々にとって追い風であると捉えています。
──より高度なAI活用が進んでいくと、広告運用やデータの分析・活用など、いわゆるデジタルマーケターの業務や役割はどのように変わっていくでしょうか?
広告の世界では、「Right Person/Right Message/Right Place/Right Timing」というような表現がありますよね。広告の最適化に向けてこれら一つひとつを事前にプランニングし実行するプロセスが、とても大事にされてきたと思います。
昨年、Metaは新しい広告ソリューション「Meta Advantage」を発表したのですが、これは広告最適化のプロセスを自動化し、かつ広告効果の向上にも寄与するものです。最適化や効率化のようにAIが得意な分野に関しては、Meta Advantageに限らず、AIに任せることが重要だと考えます。
ただ、そのAIが最大限に効果を発揮できる環境を用意するのは人が行うべきことです。たとえば、AIを活用して広告配信の最適化を図るとき、「何が正しかったのか」という正解(コンバージョン)のデータをAIに教えてあげることは非常に重要です。そうでなければ、AIの最適化や分析の結果が正しくないものになってしまう可能性があります。プライバシーに配慮し許諾の取れたデータを収集し、それをきちんとCAPI(Conversion API)などのソリューションを使ってAIに送る。その上で、正しいマーケティングの意思決定を行うといったことが、これまで以上に重要になっていくのではないかと思います。