※本記事は、2023年10月刊行の『MarkeZine』(雑誌)95号に掲載したものです
【特集】本格AI時代到来 広告・マーケティング業界の行方
─ AI時代の来し方行く末 ビッグウェーブを乗りこなすヒント
─ 生成系AIで検索連動型広告はどう変わる? プラットフォーマーとマーケターの現在地
─ 独自のデータを持っていることが生成AI活用の差別化になる
─ AIで広告クリエイティブの制作はどう変わる?サイバーエージェントに聞く、変化と未来
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:AIが最大限の力を発揮できるよう環境をいかに構築するか
─ AIで変わる仕事、変わらない仕事:生成AIにできること、クリエイターにしかできないことは?(本記事)
─ ChatGPTで話題沸騰となった2023年、今日までに見定めたAI活用のリアルな現在地
AIのクリエイティブに欠けているもの
──クリエイティブの領域においては、とりわけAIが脅威となることも多いのではと思いますが、いかがですか?
よく聞かれることではあるのですが、結論からお話ししますと、私はAIを脅威とは思っていません。クリエイターは、テレビなり、スマホなり、屋外のいろいろなメディアなり、その時代の新しいものを道具として使いたがる生き物です。AIについても、新しい道具が増えたのだと捉えています。
AIを実際に使ってみて思ったのは、我々クリエイターが日々作っているものは、絵とか言葉とか、最終的にみなさんが見たり聞いたりするアウトプットだけではないということです。どちらかと言うと、そのアウトプットに至るまでのプロセスこそが主体であり重要なのではないかと思っています。
というのも、今の生成AIは、あくまでも“結果”のデータをもとにそれらしいアウトプットを出しているんですよね。そこには発想のプロセスがありません。クリエイターは、世の中や人々の心理を観察して、「どんな視点・切り口にすれば、人が動き出す強いクリエイティブになるだろうか?」を考えます。その発想の先に、アウトプットがあるわけです。ですから、人に強く作用する、人が動くという点においては、少なくとも今時点では、人間のほうがAIよりもアイデアを出す性能は高いだろうと感じています。
ただ、AIに対して無関心でいることはできません。生成AIではどのようにプロンプトを入れるかでアウトプットが変わったりしますが、これはある意味クリエイティブのディレクションに近いんです。AIをどう使うと、どんなことが起きるのか? AIを道具として使えるように、そこの肌感覚を持っておかなければいけないと思います。