プロと素人の垣根を取り去る動画生成AI 普及した先の動画制作とは
生成AIにはまだ課題が多いとお伝えしてきましたが、今後10年20年単位で、それらの課題はクリアされていくことが予想されます。
テキスト入力によってワンタッチ、かつ、制作者の意図どおりにコントロールした動画制作は、実現の可能性が十分にあります。また、テンプレート化しやすいPR動画、SNS向け動画、個人向けの動画などは、自動生成で完結できるようになるかもしれません。
生成AI登場の本質は、「超超効率化による技術格差の縮小」と言えるでしょう。効率化によって起こることは、ここ10年の動画文化の変化と近いかもしれません。
今でこそYouTubeには、プロ素人問わずあらゆるジャンルのコンテンツが溢れるようになりましたが、以前は動画制作も今ほど敷居の低いものではありませんでした。PCの進化や安価なツールの登場、そしてプラットフォームが普及したことで、誰でも創作と公開ができるようになり、テレビ番組やラジオの一部を代替するコンテンツが生まれるようになったのです。
しかし、長尺の映画あるいは連続ドラマやアニメーション、特撮VFX、特殊な舞台装置やCGを必要とする作品は、個人で作るには今でも敷居が高く、基本的には大プロダクションの領域となっています。
生成AIは、この垣根を崩すかもしれません。
大型作品を作るためには、複数の横断したスキルが求められます。作品コンセプト、キャラクターデザイン、ストーリー、ナレーション、アニメーションや実写撮影、CG、編集、音響効果——。構想はあっても、完成までの難易度が高すぎて作れなかったクリエイターは山のようにいるはずです。これらの難易度がAIによって下がることで、たとえば小学生がヒット特撮ドラマを配信したり、サラリーマンが趣味としてPixarレベルのCGアニメを作ったりすることができるかもしれません。AIがもたらす技術格差の縮小は、プロと素人の垣根を取り去っていきます。
未来の動画クリエイターに求められるスキルとは
それでは、あらゆる創作・エンタテイメントで素人とプロの垣根がなくなり、技術の差がほとんどなくなったとき、クリエイターにはどのようなスキルを持つことが求められるのでしょうか。
プロデュース/コンセプトメイキング
動画生成の精度がどんなに上がっても、「人間の心を打つ動画を作ってください」「この世代の次のトレンドになる動画を作ってください」という指示を体現する作品を作ることはできません。時代を捉え作品として完成させるための総合的なクリエイティブは、クリエイターに求められ続けるでしょう。
独創的なスタイル
世の中に比較的多くある、フォーマット化された典型的なスタイルは、AIが自動的に作ってくれるかもしれません。しかし、注目を浴びるようなほかとは一線を画すクリエイティブは、AIだけでは作れないと私は考えています。
意外な組合わせと特化した才能
専門的な知識、マイナーなバックグラウンドなど、これまで動画領域に参入していなかった特性を持つ人が動画制作を行うことで、新しいジャンルを生んだり、これが強みになったりする可能性が大いにありそうです。
生成AIは今のところ、人間の感動やエンゲージメントといったフィードバックをもとにコンテンツを生成することはできません。そのため、創作の主体となる構成は人間が組み立てていくことになります。またAIが普及したときには、類似テイストのクリエイティブが大量に増える可能性もあります。こうしたなかで差別化できるクリエイティブを生み出していくことも、まだまだ人間が担うべき大切な役割と言えるでしょう。
まとめ
クリエイターの定義は変化すれど、むこう20~30年で人間の創造性がAIに凌駕されることはないと私は思っています。カルチャーと必要スキルの変化に追いつき、思う存分創作を楽しんでみることが、いまもっともクリエイターに求められていることなのかもしれません。
いつしか創作を諦めてしまっていた人たち、才能を生かしきれなかった人たちが、生成AIによって世の中に何かを残すことができるようになるのだとしたら、それは明るい未来なのではないでしょうか。まず未来へ踏み出す最初の一歩として、今回ツールをはじめ、新しい技術と文化に触れてみることをオススメします。