買い手としての眼力に自信を持とう
大橋 聡史(担当講座:マーケティングの基本姿勢)
総合広告会社でマス、デジタル、各種リサーチなど広範な領域を20年超にわたり経験。その後、事業戦略や生体センシングデータ、脳科学によるクリエイティブコンサルなど、領域を深化・拡張。2件の特許も取得。クリエイティブディレクターとしての広告案件も並行しながら理論と実践を行き来する。2022年より大手デベロッパーの新規事業群立ち上げに従事。著書に「届くCM、届かないCM」など。
Q1.初心者マーケターが自身のスキルアップのために意識すべきこと、まず経験したり学んだりすべきことを教えてください。
初心者マーケターという言葉に惑わされないようにしてくださいね。
まずあなたは、かなり練度を磨いてきた「買い物のベテラン」であるということを自覚してください。
服や本、スイーツやレストラン選び、どのサブスクで通信やコンテンツを楽しむか? 会社でも、今までマーケ以外の部署にいたのだとしたら、そこで購買判断に携わっていたのかもしれません。そのときの純粋かつシビアな自分の「買い手としての眼力」を、圧倒的な信頼感で自覚すること、自己肯定すること、これが何よりも大事です!
何かマーケターという役割に染まらなきゃ、と思ったとたんに迷子になりますよ。会社や組織の都合に染まることは、とりわけマーケターにとっては、いいことありませんから。
その確たる自分軸を意識できたら、次に他人や世間が、なぜそういう判断をしているのだろう? と、いろいろ目に付く流行や現象を解析することを楽しみとしてやってみてください。それで万事OK!
Q2.初心者マーケターが読むべき本を教えてください。
ちょっと話題が離れているように思うかもしれませんが、こんな世界的ベストセラーを読む余裕があっても良いかもしれません。『スマホ脳』をお薦めします。
事業活動はプロダクト(モノやサービス)を【生み出し】、それをマーケットに【伝える】ことで回っていくものだと思います。生み出すことも大変なことですが、【伝える】ところもなかなか難儀なもので、巧拙というかセンスというか、素養が問われる領域でもあります。
カジュアルに「コミュ力」なんていういい方もありますが、脳科学、認知科学、情報環境、クリエイティブなど、深入りすると未解明の人間そのものの真髄に潜っていくことになります。
【伝える】【伝わる】という人間の情報摂取の場面で現代人に何がどう起こっているのか、ちょっとでもカジッてからデジタル時代の情報戦に挑んではいかがでしょうか? 要は、マーケティングメッセージのほとんどは歓迎もされずスルーされてしまうのですから。
顧客の視点に立ち、データで顧客を見える化しましょう
CaTラボ
代表 オムニチャネルコンサルタント
逸見 光次郎(担当講座:Webマーケティングの戦略立案BtoC編)
三省堂書店、ソフトバンク、Amazonジャパンを経て2007年にイオンへ入社。ネットスーパーの立ち上げと全社デジタルビジネスの戦略を担当。2011年にキタムラへ入社。執行役員EC事業部長としてオムニチャネル化を推進した。2017年にコンサルタントとして独立。経営、業務、ITまで含めた全体最適のオムニチャネル化支援を行う。
Q1.初心者マーケターが自身のスキルアップのために意識すべきこと、まず経験したり学んだりすべきことを教えてください。
一つ目には、やはり自社の商品サービスを自分で購入して試すことです。店舗やネット、卸先それぞれの販売チャネルでの接客やオペレーションを体験し、可能なら製造現場や倉庫も見せてもらって会社のモノの流れを説明できるようになることは、基本ですがとても大事なことだと思います。
二つ目は、自社の顧客を理解すること。その際、データの観点と、顧客と対面・接客して知る観点の双方から顧客を見える化して説明できるようにしてみてください。また、中長期の観点を持つことも大切です。たとえば、顧客獲得コスト一つとっても、1年の短期視点ではなく、5~10年にわたってその先で顧客が継続・離脱する所まで考えて費用対効果を考えるクセをつけるとよいでしょう。
最後に三つ目は、マーケターというよりビジネスパーソンとして意識すべきことですが、自分の評価が会社とどうつながっているかを、特に売上、経費、利益そしてキャッシュの観点で数字で説明できるようにすることです。
Q2.初心者マーケターが読むべき本を教えてください。
これからの時代、マーケティングにおいて最も大事なのは、顧客軸でリピートを増やすことになると考えます。国内人口は増えない中で、訪日客を含めた個の顧客のリピートをしっかり見える化して情報接点を作り、購入接点を作ることが求められます。
これまで商品軸と店舗・販売チャネル軸でしか考えることがなかった販売分析(商品勘定)を、顧客分析に進化させる思考が「顧客勘定」です。
著者の前田さんは小売、コンサルなど幅広いご経歴の中でLTV(ライフタイムバリュー)を見える化して施策につなぎやすくする思考を生み出されました。実際に、私もご教示を受けて初めてきちんとLTVを施策に落とし込めるようになりました。
この本では顧客勘定についてタワーレコード在籍時の事例などを使ってわかりやすく書かれています。マーケターの必読書です。
この1~2年でマーケの根底がひっくり返るかもしれない
ウィット
代表取締役
渥美 英紀(担当講座:Webマーケティングの戦略立案BtoB編/Webマーケティングで活用できる生成AI基礎)
BtoBの様々な業界の売上アップ・ブランド強化・営業改善など、200以上のプロジェクトを担当。特にリード獲得や売上アップに高い成功確率を誇り、2009年にノウハウをまとめた『ウェブ営業力』(翔泳社)を執筆。アクセスログ解析システム、メール配信システムなどの開発も手掛けたことから、専門性を生かした"総合的"かつ"現場に根差した"Webマーケティング支援を得意とする。
Q1.初心者マーケターが自身のスキルアップのために意識すべきこと、まず経験したり学んだりすべきことを教えてください。
ここから1~2年はマーケティングのやり方が根底からひっくり返る可能性がある時期です。
もし、所属している会社・部門がAIの活用に消極的であれば、ぜひAIを前提とした業務プロセスを意識し、いま行われているワークフローをすべて効率化するつもりで挑んでほしいです。
話題となった生成AI「ChatGPT」でも本格的にリリースされてからまだ1年。「よーいドン」が始まったばかりで、初心者マーケターだとしても、実務経験は乏しいかもしれませんが、AI活用で社内で一番になれる可能性があります。
往年の手法を学ぶだけでなく、新しいツールをガンガン活用をしてほしいです。そして、社内のベテランのノウハウと最新のAIのつなぎ役を目指してほしいと思います。
Q2.初心者マーケターが読むべき本を教えてください。
業務にAIを活用するには、単にツールを使うだけでなく「1.業務プロセスを理解すること」、そして「2.各AIの特性を理解すること」が重要です。
幅広い業務テーマで、そのための道筋を示してくれます。ぜひ自分の業務に置き換えることをイメージしながら読んでほしいです。