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小さな会社、大きな仕掛け

年間広告費は2.5億円!異端の歯科医院が看板広告を制するまでの波乱万丈ストーリー【前編】

広告出稿のきっかけはインプラントとの出会い

「『俺の人生はこんなもんか』『このまま安定的に60歳くらいまで続けて、それで終わりか』そう思っていたんです。悶々とした気持ちを抱えた2000年前半、複数の顧客から『インプラント治療はやっていないのか?』という質問を立て続けにもらいました。対応していない旨を伝えると、顧客たちは去って行ったんです。インプラントについて詳しく調べてみた結果、この技術は確実に“来る”と感じました。あまりの興奮に顔面が硬直したのを覚えています」(きぬた)

 きぬた先生は早速、インプラントの技術を持った歯科医に教えを乞うた。この技術があれば歯科医院という事業を次のフェーズに持っていける──それだけの確信があったのだ。そこからの行動は素早く、きぬた歯科でインプラント治療に特化することを決意した。

「新しいことを始める際『真剣に真面目にやっていれば、いつかだれかが口コミを広げてくれる』と思っているなら、それはほとんどのケースにおいて大間違いです。インプラント歯科としてどうすれば儲かるのか、文字どおり寝る間を惜しんで24時間考え続けました」(きぬた)

 当時、インプラントは新しい技術だった。人々の間でメジャーな選択肢になってはいなかったが、のちのちきぬた歯科がインプラント歯科の代表格として認知を獲得するためには、これまでと違う大きな手を打たなければならない。これが、きぬた歯科が広告出稿を本格的に検討し始めたきっかけだ。

広告規制でピンチ!思いついた奇策とは

 商売を始めたら、世の中に知らしめなければ存在しないも同然である。しかし、最初から大々的にテレビCMを出稿するような予算は手元にない。まずは身近で価格が安く、最も来店につながりやすい広告を検討した。タブロイド判や地域新聞など、地元の人々の目に留まる場所で広告を出稿し始めたところ、徐々に認知が広がり集客できるようになってきたという。

 順調に安定して集客できることがわかったきぬた先生は、商圏を広げるために広告を増加し、さらなる集客を試みた。そこで立ちはだかったのが歯科医師会の壁だ。当時インプラントは広告規制の対象であり、きぬた歯科の広告は医療法に抵触していたという。歯科医師会が地域新聞側に圧力をかけ、きぬた先生は広告を出稿できなくなってしまった。

 しかたのないことではあるが、集客手段が絶たれると予約も入らない。ピンチの日々が続いたある日、週刊誌を見ていたきぬた先生は美容整形の広告が出ていることに気づく。しかしよく見ると、美容整形自体の広告ではなく、美容整形医院の院長が出版した書籍の広告だった。

「詳しく調べてみると、美容整形自体の広告は規制対象であるものの、書籍は規制対象から外れるというわけです。『これならいける』と考え『入れ歯とは一生無縁の人生を!!』というタイトルでインプラントのVHSを制作し、その広告を出稿しました。この方法が当たり、広告を見た人々が来院してくれるようになったんです」(きぬた)

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安定経営の最中に相次ぐ予約キャンセル

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/29 12:14 https://markezine.jp/article/detail/43908

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