製品軸×ターゲット軸で進める、セイバンの多角化戦略
手始めに「Soda!Soda!」というメディアを立ち上げた。これは小学生を対象にしたメディアだ。探求という考え方をベースに、子どもが一人で生き抜く力を身につける動画や、親の困りごとを解決する読み物などを提供している。
2023年は会員向けに様々なイベントも開催した。プロスポーツチームとの協賛やプロダンスチームとのダンスセミナー、親子で学べるお金の教室などを開いた。SEIBAN スマイルメンバーズの会員数は4万人を超え、2025年には10万人超えを目指している。
加えてターゲット軸では、幼保一体型の認可外こども園を開園。これは6歳以下の子どもに向けたサービス提供として、SEIBAN スマイルメンバーズで展開する探求の考え方をしっかりと身につけられる施設だ。
2018年に子ども服のfamiliarとセイバン・ファミリア・カンパニーという合弁企業を立ち上げ、東京・白金台で、「ファミリアプリスクール」を運営してきた。これを通して子どもへのオペレーションやカリキュラムなどのノウハウを吸収し、2023年10月にセイバンで「セイバンスマイルこども園」を兵庫県に開園した。今後も、子ども園の横展開や、 卒園した子ども向けのアフタースクールの提供といった形で、中長期的に事業を拡大させていく予定だ。
顧客インサイトから新しいランドセルブランドを
また同社は、製品軸の第2弾として、新規ランドセルブランド「+CEL(セル)」の開発を行った。「天使のはね」で培ってきたランドセルの製造技術やノウハウと、MONOLITHで培ったブランディングノウハウを活用している。
ランドセル市場は、工房系とメーカー系に大別できる。工房系は、職人の手作りでこだわりを持って仕上げる、味のあるランドセルだ。一方メーカー系は、近代的な設備で安定した品質で生産し、機能が充実した製品となる。この中で桒田氏は「従来はメーカー系のシェアが100%近かったが、ここ20年ほどで工房系がじわりじわりとシェアを獲得してきている」と話した。大手であるセイバンとしても、工房系のブランド開発を行った。
工房系のブランド開発をするにあたり、同社はいくつか調査を行った。まず「ランドセルを買う時に最終的に誰が購入を決めたか」という調査では、メーカー系の購買層は半分以上が子どもに選択権があった一方で、工房系は親が決めた割合が8割という結果となった。

また、購入ポイントに関する調査では、工房系の購買層の方で重視されるのが、落ち着いた色やしつらえ、素材となった。軽さや内容量といった機能性より、自分のスタイルに合ったランドセルを持たせたいという強い思いがあるようだ。
一方で、メーカー系の購買層が重視するポイントは、容量や軽さ、背負いやすさ、正しい姿勢、安全設計という、子ども思いの機能が高くなった。このようにメーカー系と工房系の購買層では、こだわるポイントが違うので、開発の訴求ポイントも当然違ってくる。
「セイバンで元々持っている軽さや容量、背負いやすさといった機能性に、工房系を好む層に響く色や素材などを掛け合わせられれば、最後発のランドセルブランドにも勝機があると考えました。ただ、その嗜好を理解するのがなかなか難しいという課題がありました」(桒田氏)
