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「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来

2023年のヒット作品から「2024年の欲望」を予測してみる

 電通の消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN(DDD)」による連載の7回目。今回は、DDDの分科会であるチーム「欲望の未来予測チーム」が行っている、映画やドラマなどの「物語」のヒット作品から未来の欲望トレンドを推論する一風変わった分析手法「FUKAYOMI」と、その分析に基づき導かれた「2024年の欲望予測」についてご紹介いただきます。

未来の欲望はヒット作品から考察できる

 DDDの分科会である「欲望の未来予測チーム」では、映画・ドラマ・アニメ・漫画・小説など「物語」、とりわけ大勢に支持されたヒット作品の分析を通じて、直近の未来に一般化しそうな新しい欲望の萌芽を捉えようと試みています。物語性さえあればフィクション、ノンフィクションは問いません。格闘技イベントの『Breaking Down』や恋愛リアリティショーも分析対象です。

 我々が物語を分析対象とする理由は、すべての物語が作り手の極めて個人的な欲望の発露を出発点としているからです。既に市場に存在するだろう欲望に応えるかたちでマーケティングを行う一般の商材とは、この点で大きく異なっています。物語を鑑賞することで新たに生まれる欲望の欠片は、任意の潜伏期間を経て大きなマスの欲望に育つ可能性があります。日本人の半歩先の欲望を先取りするために物語を分析することは、非常に有効だと我々は考えています。

 特に作家の個性が重んじられる日本において物語の制作プロセスには多かれ少なかれ、そして意識無意識を問わず、作り手の個人的で内省的な欲望が多く練り込まれています。世界がこうなればいいのに、こういう人生をおくりたい、こんな家族が欲しい。こんな風に苦しんでいる人の存在を知ってほしいという問題提起もそうです。それを世の中に発信し反応を見たいと思うのは、作り手が物語をつくる動機の一つでしょう。

 我々が物語を享受する時、同時にそれら作り手の個人的な欲望も受け取っていることになります。既に視聴者自身や世間で自明の欲望を目にしても大きく心が動かされることはありません。鑑賞時点で自分の中で無自覚だった新しい欲望に遭遇した時の「発見」が、我々を物語の世界に引きずり込むのです。

 自分の中に新しい欲望が生成された鑑賞者が次に期待するのが、この欲望が劇中でどのように「解消」されるのかということです。それは往々にしてクライマックスに訪れます。この解消方法に「その手があったか」という意外性がある時、鑑賞者は高い満足感を得ることができます。逆にあえて明快な問題解決をせず鑑賞者に委ねる方法もあり、その場合は強いモヤモヤ感を引き起こします。いずれにしても生成された欲望の行方を追うプロセスを登場人物と、彼らに感情移入した鑑賞者が共有することこそ、物語の最大の魅力だろうと思います。

 そして鑑賞者にとって物語は物語の中で完結するわけではありません。上記の一連のプロセスを体験した鑑賞者のほとんどが登場人物の生き様に自らの人生観を重ね合わせるのではないでしょうか。つまり、物語は鑑賞者自身の価値観に影響を及ぼします。鑑賞後に世界の見え方が少しだけ「変化」するはずです。自分もあんな風に生きてみたい、社会はこのように変化するべきだなど。

ヒット作品から、新しい欲望の誕生を予測するフレームワーク

 ここまでが物語それ自体から読み取れる要素ですが、我々は同時期の様々なトレンドや社会事象とも照らしながら、その先に現れる「新しい欲望」にも目をむけます。ポイントは物語がヒットしたか否かです。ヒットは作り手の個人的な欲望、作り手がつくり出した欲望の解消方法に大勢が共感した結果と捉えることができます。また何よりも、同時期に同コンテンツを目撃した大勢の日本人が、そこから価値観を変化させ、半歩先の未来に向けて新しい欲望を発露させる可能性があることを示しているのです。我々が欲望予測にヒット作品を用いる理由はまさにここにあります。

 もちろんヒットという現象には、出演者の知名度、原作の人気、巧妙なプロモーション、既存ファンのいるシリーズであることなども複合的に影響します。我々はそれらの要素を剥いでいっても尚、物語そのものが支持されているかどうかを慎重に確認し、調査対象を設定します。

 以上を踏まえ、我々は以下の「FUKAYOMI」というフレームワーク用い、欲望予測をゴールとして、ヒット作品を見た人の脳内でどんな「欲望の発見」「欲望の解消」「価値観の変化」が行われているかを抽出し分析しています。

FUKAYOMIの4象限フレームワーク
FUKAYOMIの4象限フレームワーク
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この記事の著者

佐藤 尚史(サトウ ヒサシ)

株式会社電通 第2統合ソリューション局 プランニングディレクター

古今東西の人文知を武器に企業と社会をつなげるマーケティング戦略の立案とアイデア開発を行う。サービス設計からワークショップ企画、イベント実施まで行う究極のプランニング雑用係。個人的パーパスは「人を知ると社会がよくなる」。ポッドキャスト「ニンゲンラジ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/07 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43967

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