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MarkeZine Day 2026 Spring

セガ エックスディーが語る、ユーザーの心を動かす「行動中心設計」な仕掛け

ユーザーの“やりたくなる”を使いこなせ!企画設計から行動変容を促すまでのフレームワーク活用

行動中心設計で体験をデザインした防災訓練を実施!

 まとめると、「一目で防災訓練とはわからない映画のようなポスター」で参加したくなり、「隕石が衝突するという仮定のストーリーの中で、迫り来る災害から身を守るために参加者同士が協力しながら避難所を作り上げる」体験ができました。「ついやりたくなってしまう」瞬間UXと「ついやり続けてしまう」習慣UXで構成された、主体的に参加したくなる防災訓練の完成です。

 当社ではここまでのプロセスを経て、神奈川県総合防災センターで「THE SHELTER」という防災訓練企画を実施しました。この訓練のストーリーは、隕石衝突まで残り1時間に迫った中、参加者同士が協力して避難所に入室するための鍵を集めるというもの。入室後に避難所内に簡易トイレやベッドなどの設備を作っていき、衝突の爆風を防ぐために避難所のドアを閉めて成功となります。

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 当日は多くの方に参加いただき、事後アンケートでも満足度平均9.5点(10点満点)に。「知り合いに紹介したい」は平均9.2点(10点満点)、「また参加したい」の割合は93%と、多くの人が主体的に参加したくなる防災訓練の体験を創出できました。詳細を知りたい方は、防災訓練のレポートからご覧いただけます。

 従来であれば、防災訓練に参加してもらうために参加賞を用意したり、業務指示で参加を一定強制したりといったアプローチになりがちです。一方で行動中心設計では、機能的・合理的に課題を解決するのではなく、「やりたくなる」をデザインすることで行動を変革し課題を解決していきます。

 1つの行動(防災訓練に参加する)が設計され、この行動を繰り返し行うことで、住民の生活のなかで「防災訓練」を行うことが当たり前になり「防災意識・知識」が高まる状態が完成する。この方法こそが、一つひとつの行動まで分解して変革し積み上げることで、大きな目標(CX)を実現するという、行動中心設計です。

人間理解をもとにした、「ゲーミフィケーション2.0」

 別の事例として、ベネッセコーポレーションさんと「学生が英語の勉強をする、しないという選択肢で、するを選択する」という課題にアプローチするサービスの準備を進めています。本サービスも、ここまで紹介してきた行動中心設計を活用。「勉強はつまらないものではなく、やりたくなるもの」に切り替えていくため、リズムゲームと英語学習を有機的に結合した体験設計を進めています。

 2024年4月にアプリはサービスインとなりますが、粘着質な体験を実現するために「社交性」の「共創」をサービス開始前から行っています。開発を手伝っていただける方を募集し、一緒にキャッチフレーズを考えたり登場キャラクターや音楽のコンテストを行ったりと、実際にゲームに反映される要素をユーザーと共に作っています。

 以上、連載の全5回に渡り「やりたくなる」を作る行動中心設計を紹介してきました。最後に、行動中心設計を活用する4ステップを簡単にまとめて締めたいと思います。

(1)大きな課題を設定する
(2)行動単位にブレイクダウンする(3W1G:WHO「誰が」・WHEN「どういうシーンで」・WHICH「どの選択肢で」・GOAL「何を選ぶべきか」
(3)瞬間UXと習慣UXをそれぞれ定義する
(4)継続的に行う

 この手法を構築した起点には、「つい夢中になってしまう」が詰まっているゲーム/エンターテインメントがあります。ゲームが持つ、つい夢中にさせる要素を非ゲーム領域でも活用するゲーミフィケーションの概念は、ご存じの方も多いかと思います。

 一方で、夢中になってしまうゲームUXの活用に大切なのは、ゲームライクなデザインを使うことでもランキングやバッヂの導入といった表面的な方法論でもありません。行動単位で体験の本質をとらえ、人間理解を深め、「ついやってしまう、ついやりたくなる、ついやり続けてしまう」を設計していく必要があるのです。

 ゲームUXの方法論のみを活用する従来のゲーミフィケーションではなく、ゲームUXの本質的な考え方まで拡張して活用する「ゲーミフィケーション2.0」の考え方が浸透し、正攻法だけでは解決できない困難な課題に対してエンターテインメントが解決の手法として当たり前になっていけばと思います。連載で登場した各種フレームワークも含めて、読者の皆様のマーケティング活動の一助になれば幸甚です。

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この記事の著者

伊藤 真人(イトウ マナト)

ゲーミフィケーションデザイナー/株式会社セガ エックスディー 取締役 執行役員 COO

 株式会社セガにゲームプランナーとして入社し複数タイトルのモバイルゲームディレクターを担当。 新規事業部門にてアドプラットフォーム事業を立ち上げ総ユーザー数1億超を達成。その後メディア/ポイントプラットフォーム/コミ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/04 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44199

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