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MarkeZine Day 2026 Spring

「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来

幸せだけど我慢も多い?消費の好循環からたどる、今どき若者の消費意識の現在地

幸せだけど我慢も多い?今どき10代のリアル

 ここまでの調査結果から、心が動く買い物をすると消費の好循環に繋がりやすくなるということが概観的に見えてきました。ここからは、具体的なテーマ性をもって消費者の現在地を把握してみたいと思います。

 1年前と比較して幸福度が増えたか減ったかを聞いた設問で「幸福度が増えた」と答えた人の割合は全体で21.0%でした。「減った」と答えた人が26.8%だったので、全体で見ると「減った」と答えた人の割合のほうが多い結果となりました。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表4】設問「1年前と比較して幸福度は増えたか、減ったか?」の結果(クリックして拡大)

 「増えた」と答えた人の割合を性年代別で見てみると、10代男性は42.7%、10代女性が35.2%となり、10代は男女ともに1年前より幸せだと感じている人の割合が多いことがわかりました。興味深いのは、20代はこのスコアが大きく異なる点です。

 20代女性が37.8%、20代男性は16.7%と、女性は20代のほうが10代よりスコアが高くなるのに対して、男性は26ptも下がる結果が出たのです。

 同じ設問で「ワクワクしたり、楽しみなこと」の増減について聞いたところ、「増えた」26.4%、「減った」25.0%で全体ではほぼ同数に。一方、こちらも10代が男女ともに突出して「増えた」と答えた人の割合が多く、10代男性が50.0%、10代女性は53.8%とどちらも半数かそれ以上の人が去年よりもワクワクや楽しみなことが増えたと答えました。

 この2つの結果を見ると、今どきの10代はワクワクすることや楽しみなことが多く、幸せいっぱいな人が多いように見受けられます。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表5】設問「1年前と比較して、ワクワクしたり楽しみなことは増えたか、減ったか?」の結果(クリックして拡大)

 では、反対に「1年前と比べて我慢することが増えたか減ったか」の回答も見てみましょう。すると、10代男性40.6%、10代女性46.2%が「増えた」と回答。全体の31.6%をいずれも大きく上回る結果となっています。他の年代は高くても40%に届かないことを考えても、10代の若者は他の年代と比べて日常的に何かを我慢している様子がうかがえます。

 幸せを感じているし、ワクワクすることや楽しいことも多いが、我慢することも多い。若者の回答結果からは「いつまでも満たされない欲望」が渦巻いているような印象を覚えます。「近頃の若者には欲がない」などと言われる昨今ですが、実態としては、今のティーンは幸せを感じながら我慢しており、欲望はしっかり持って暮らしていることが読み取れます。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表6】設問「1年前と比較して、我慢することが増えたか減ったか?」の結果(クリックして拡大)

「欲望を満たしたい……!」という若者の意識

 続いて、「爆買い・全話一気見など欲望を満たしたいという気持ちが増えたか減ったか」を聞いた設問では、男性10代が40.6%、女性10代が50.5%といずれも他年代と比較して突出して高いスコアが出ました。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表7】設問「爆買い・全話一気見など欲望を満たしたいという気持ちが増えたか減ったか」の結果(クリックして拡大)

 10代は男女ともに日常で様々なことを我慢しているからこそ「満たしたい」という気持ちが増えており、それを自分でも感じていることがわかります。その気持ちと呼応するかのように「お金を払ってでも自分のために使える時間を確保したいか?」という設問でも、10代の多くが「そう思う」と答えています。

 10代男性が70.8%、10代女性も65.9%と全体の43.0%と比べるととても高い数値となっており、欲望を満たすために自由に使える時間を欲する若者の心境が見えてきました。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表8】設問「お金を払ってでも自分のために使える時間を確保したいか?」の結果(クリックして拡大)

 続いて、消費に対する意識を見てみたいと思います。こちらは「欲しいものだったらあまり検討をせずにすぐに買う」かどうかを聞いた設問です。全体31.7%に対して、10代男性が52.1%、10代女性が51.6%といずれも全体より約20pt高い結果となりました。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表9】設問「欲しいものだったら、あまり検討をせずにすぐに買うか?」の結果(クリックして拡大)

 日々幸せを感じてはいるが、我慢していることも増えてきた。我慢を続けるうちに欲望を満たしたいという気持ちが生まれ、それをあまり検討せずにする買い物で満たしていく――実に若者らしい消費行動ではないでしょうか。こうした消費が好循環の一役を担っているのかもしれません。

「自分らしさ」はシニアと若年男性の代名詞に

 最後に、価値観についてみてましょう。考え方や行動に関する設問で「自分らしく生きている自信がある」か聞いたところ、全体の53.6%が「そう思う」と回答しました。性年代別に見ると10代男性が69.8%、70代男性が69.0%ともに平均より15pt以上高くなっています。

 一方で女性は60代が63.7%、70代が77.4%という結果に。反対に最も低かったのは40代で男性は43.0%、女性は47.0%と、40代は男女ともに自分らしい生き方とは遠いと考えていることがわかりました。

【図表1】設問「良い気分、気持ちが得られた買い物・商品があったか?」の結果(クリックして拡大)
【図表10】設問「自分らしく生きている自信があるか?」の結果(クリックして拡大)

 この「自分らしく生きている」と思っている人と思っていない人では、どういった価値観の違いがあるでしょうか。「自分らしいと思えれば、人と同じでも気にしない」かどうかを尋ねた質問の回答を見てみましょう。

【図表12】設問「自分らしいと思えれば人と同じでも気にしないか?」の結果
【図表12】設問「自分らしいと思えれば人と同じでも気にしないか?」の結果

 ご覧のとおり、「自分らしく生きている」と思っている人のほうが、そうでない人と比べて「人と同じでも構わない、気にしない」と考えていることがわかります。「自分らしさ」と言われると、みなさんはどういったイメージを持たれるでしょうか。「ナンバーワンよりオンリーワン」と言われた時期があったように、30代、40代以上の方には「自分らしさ=独自性、他の人にない自分らしさ」といったイメージを持っている方が少なくないように感じます。

 この「自分らしさ」に対する考え方の違いが、先ほどの年代によって「自分らしく生きている」と思っているかどうかの差の一因になっているように見受けられます。

 DDDでは、消費意識と価値観には大きな関わりがあることをこれまでの連載でもお伝えしてきました。この「自分らしさ」は2024年に向けた消費につながるキーワードの一つではないかと我々は考えています。10代も調査対象に加えた「心が動く消費」調査を軸に、より広い視野で今後も「消費意識の現在地」を探ってまいります。

調査概要

□タイトル:電通「心が動く消費調査」
□調査目的:変化し続ける社会環境により可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く
□対象エリア:日本全国
□対象者条件:15~74歳
□サンプル数:3,000サンプル(10〜70代の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
□調査手法:インターネット調査
□調査期間:
パイロット調査:2021年5月18~21日
第1回調査 2021年9月3~6日
第2回調査 2021年12月16~19日
第3回調査 2022年5月12~15日
第4回調査 2022年11月2~7日
第5回調査 2023年5月10~15日
第6回調査 2023年11月2~3日
□調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

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この記事の著者

立木 学之(タチキ ガクジ)

株式会社電通 第4マーケティング局 未来シナリオコンサルティング部 ソリューションプランナー/電通デザイアデザインメンバー

2003年電通入社以来、消費者研究センターや電通総研など主にマーケティング部門に所属。デジタル部門でビール、航空、食品、自動車関連、製薬、金融など多くの企業のデジタルマーケティングのプラン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

千葉 貴志(チバ タカシ)

株式会社電通 ソリューションクリエーションセンター 未来インサイト部 プロデューサー/プランナー/電通デザイアデザインメンバー

2008年電通入社。営業、デジタル、テレビ、電通総研などの部署を歴任し、現在は消費者研究プロジェクトDENTSU DESIRE DESIGNの一員として「欲望」を基点とした消費動向やト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/08 09:30 https://markezine.jp/article/detail/44297

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