生成AI時代のゲームチェンジ
有園:2022年11月にOpenAIがリリースした「ChatGPT」をはじめ、生成AIが広告業界へもたらす影響への注目が高まっています。振り返ると、矢嶋さんは1996年にグループ会社のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)を立ち上げ、それから約30年、日本のインターネット広告業界で活躍してきました。業界の変遷をどう見てきましたか。
矢嶋:1996年は「Yahoo! JAPAN」がスタートした年でもありますね。そこから約30年を振り返ると、約5年に1回、デバイスやCPUをはじめテクノロジーの大きな進化がありました。そして、それにともなってメインのプレーヤーが入れ替わり、新しいサービスが出てきました。その変化に対応できたかどうかによって、今も続いているサービスとそうでないサービスと、明暗が分かれています。
2022年からは生成AIも登場しましたし、Web3の時代になりました。これでまた大きく環境が変わっていきます。まさに今は、何かを始めないといけないタイミング。ゲームチェンジが起きるタイミングです。
アドテクを強化して勝負してきた
有園:本当に大きな変化がたくさんありました。その中で生き残ってきた理由は何でしょうか。
矢嶋:重要なのは変化に対応する力です。振り返ると、私たちもチャンスを逃して時流に乗れなかったこともありました。それでも、環境変化に応じて、人材、組織、投資などの配置を柔軟に変えてきました。時代に合わせてフォーメーションを変え、会社を補強してきたのです。たとえばDACでは、モバイル広告が出てきたときに、モバイル広告専門のチームを作って対応しました。
一方、これまでは主に「広告」の領域でビジネスをしてきましたが、今後はもっと「マーケティング」に踏み込んで何ができるか模索しないといけないと考えています。
有園:博報堂DYグループは、テクノロジー領域において業界でも先行してきたイメージがあります。特にDACでは、意識して取り組んできたのではないですか。
矢嶋:私たちは当時、巨大なポータルサイトの取り扱いがありませんでした。その中で勝負するには、アドテクを強化して広告サービスの価値の高い商品を作るしかありません。アドネットワークもいち早く導入し、そこを重視してやってきたのは間違いありません。
博報堂DYグループが掲げる、広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS(Advertising as a Service)」も、最も大きなコンセプトの一つは統合データベースを作ることです。テレビやPC、スマートフォン、屋外広告などのデータを統合的に管理していくことが重要です。