「2024年の欲望トレンド」事例解説
MarkeZine編集部:雑誌『MarkeZine』2024年1月号では、DENTSU DESIRE DESIGN(以下、DDD)に2024年の欲望トレンド予測を解説いただきました(ウェブ版は25日公開)。いち消費者として「そういえば、たしかに……!」と実感できるものばかりで、マーケティングの観点でも参考になる情報でした。ここでは、誌面に収まりきらなかった、欲望トレンドが既に表れている事例を紹介いただこうと思います。
それでは改めて、DDDが発表している「欲望トレンド」がどういうものなのか、教えていただけますか。
佐藤:欲望トレンドとは「2024年の日本人の欲望はこの辺りに収斂されていくだろう」という大きな欲望の塊を整理したものです。2023年に生まれた様々な社会的事象やヒット商品を帰納的に分析した上で、我々が提唱している『11の欲望』など消費者の欲望に関する基本的な定理から演繹的な裏付けを重ね、2024年も継続すると思われる欲望を抽出しています。
情報ソースは大きく3つあり、1つ目は日経トレンディ様の『2023年ヒット商品』をはじめとする各種ランキングの情報です。ヒット商品や流行語大賞、オックスフォード英語辞典を出版する英オックスフォード・ランゲージズの『Oxford Word of the Year(今年の言葉を発表するもの)』、ソーシャルメディア上のトレンドなど、様々な情報を吸収し、独自で総合ランキングを作っています。
2つ目は、弊社のプランナーによる欲望事例収集です。モノやサービスなどの消費だけでなく、“欲望の解消のために行った行動すべて”を事例対象としており、「このニュースにみんなこういう風に反応していたよね」など、消費に関係ない行動も含めて約200事例を収集しています。
3つ目は、映像作品や漫画、小説などのヒットコンテンツです。監督や著者・作者の伝えたいメッセージがある物語作品はインサイトの宝庫だと我々は考えています。DDDの分科会である未来予測チームがヒットコンテンツの深読みを通じて、半歩先の未来に一般化しそうな価値観や欲望の萌芽を抽出しています。
MarkeZine編集部:「2024年の欲望トレンド」として発表されたのは、次の6つでした。次のページから、それぞれの欲望が表出していると思われる事例を紹介していただきましょう。
1.リアリティ(リアルっぽさ)への収斂:“映え”や“盛り”の常態化による疲れが生じ、リアル(日常)でも非リアル(映え・盛りなど非日常)でもない「作為的なリアリティ(リアルっぽいもの)」に欲望が寄っていく。
2.裏ブラックボックスで表シンプル:ChatGPTなど生成AIの普及により、言わば“魔法(のようなもの)”が生活にも溶け込んできた。これにより、「裏は複雑でよくわからないけれど、UI/UXはシンプルなもの」をよしとする価値観が表出し始めている。
3.メタ(俯瞰)というカタルシス:人々の中に、“メタ=俯瞰で物事を見る”という心構えが定着しており、「俯瞰すること」「俯瞰した上で色々な選択肢を設けること」が求められるようになっている。
4.推し活経済圏の拡張:従来の推し活の概念が広がり、本来“推し”の対象ではないものにまで推し活が広がりつつある。
5.本音に応えてくれる:コロナ禍で自分に正直に生きることを覚えた人々が、既成概念から抜け出し、“本音”に応えてくれるようなモノやサービスを求めるようになっている。
6.手段のエンタメ化:タイパのさらに先をいくニーズで、いずれにしてもかかる手間や時間そのものをエンタメに変えてくれるようなモノやサービスへのニーズが高まっている。