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MarkeZine Day 2025 Retail

デジタルで広がる、オフライン広告の可能性

2023年下半期に話題となった「オフライン広告」 立地よりもコンセプト・余白・演出で拡散を狙う

周期表を活用した、つい解読したくなる広告

 次に紹介するのは、思わず足を止めて解読したくなるユニークな事例です。一つ目の広告は、2023年9月にKDDIが始めた「auマネ活プラン」の宣伝を目的として掲出したもの。サービス開始と同月に展開されました。

実際に現地で見たが、何か意図がある雰囲気をひしひしと感じた

 クリエイティブには元素の周期表が使用されており、内容をよく見ると、金を意味する「Au」がオレンジ色、Y、Nd、Ra、Sbが黒太字になっているのがわかると思います。

 周期表の下に記載されているメッセージ、「お金はauと決まっていました。」から推察するに、太字の元素記号は同業他社である「Sb(ソフトバンク)」「Y(ワイモバイル)」「Nd(NTTドコモ)」「Ra(楽天モバイル)」を指している様子。同社のブランド名「au」が周期表上で“金”を指すことに着目した視点と、競合他社との対比を表現した発想力が際立った事例でした。

 思わず足を止めてしまうという観点では、同じく2023年9月にNETFLIXが渋谷駅で実施した、ドラマシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3の制作決定に関する広告も挙げられます。

普段は大掛かりな仕掛けの広告を出稿する印象が強いNETFLIXが、B0ポスター1枚で展開するギャップも良いスパイスに

 同施策では、事前情報もなく突如、NETFLIXロゴとトランプのイラストが描かれた広告を掲出。背景にはジョーカーを彷彿とさせるキャラクターが映り込んでいるだけで、文字による解説は何もありません。謎が多いこのメッセージを読み解こうとSNS上では様々な投稿が挙げられ、意図に気が付いたユーザーによる投稿も多数見られました

広告接触者がポスターに潜むメッセージを推理し、解読した内容をXに投稿

 そして、掲出から数日後に同作のシーズン3の制作決定が発表。広告掲出から制作発表まで一切公式アナウンスがなかったこともあり、多数の憶測が飛び交い、盛り上がりを見せた施策となりました。

ユーザーに考える余白を与えることで話題化を促進

 同様に2023年10月に展開された“#ytvからの招待状”広告も話題になりました。

全国各地で展開。Xでハッシュタグ“#ytvからの招待状”を検索すると各地の目撃情報が確認できる

 高級感のある黄色の背景に、アーティスト名と「ご出席お待ちしております。」の意味深メッセージ。「#ytvからの招待状」との記載から何かの招待状である事は推測できますが、そのイベントが何かは同クリエイティブからはわかりません。

 同様のクリエイティブは都内中心に全国各地で見られ、数多くの憶測投稿が見られましたが、数日後に展開された広告で読売テレビの番組「ベストヒット歌謡祭2023」への招待状であったことが明かされました。後から掲出された広告には、「出席・欠席」という項目があり、前回のポスター広告で招待されていたアーティストがそれぞれ可否を記載。手書きの回答がそのまま掲載されていました。

手書きの出欠席表を一目見ようと、ファンの方もチラチラと現地を訪れていた

 本来であれば見えない形で行われるアーティストへのオファー(出欠確認)を、あえて誰もが見える形に落とし込むことで視聴者の高揚感を高める素敵な取り組みだったと感じています。

 これらKDDI、NETFLIX、読売テレビによる三つの事例では、ユーザーが思わず考えたくなる余白を作っているのが特徴。何かしら疑問が浮かぶ内容にしつつも、クリエイティブ内では答えを記載しないことで注目を得た事例でした。

 特に興味深いのは、どのクリエイティブも答えがきちんと推測ができる点。実際、SNSに投稿されていた憶測はほぼ正解でしたし、読売テレビが行った2段構えの広告は一つ目の広告で発信した何となく予想が付く事柄に対して、二つ目の広告で裏付けを行うような設計でもありました。難易度が絶妙だった点も注目を集めたポイントと言えるかもしれませんね。

次のページ
広告に載ることを“体験”に変換

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この記事の著者

加藤 誠也(カトウ セイヤ)

株式会社ビズパ アドクロ編集長

 食品メーカーで営業職を経験後、2019年に同社入社。主に、編集長として広告・マーケティングの情報メディア「アドクロ」のコンテンツ制作を担当。「広告巡礼」を日課としており、Xでは見つけた広告事例に考察を添えて発信、テレビ出演やセミナー登壇も多数。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/01/29 08:30 https://markezine.jp/article/detail/44650

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