人間のみに広告を配信する実証実験
有園:博報堂は、Worldを推進するTools for Humanity、韓国のLG電子と共同で、人間のみに広告を配信するアドネットワークの構築を目指す実証実験を実施しました。どのようなものだったのですか。
森田:World IDによって認証された人間にのみ広告を配信し、広告の表示履歴やインセンティブ付与の記録を改ざん不可能な形で記録しました。人間に対して表示された広告のみ、広告費が請求される仕組みを確立することが目的です。
具体的には、Worldで提供するアプリ「World App」内にポイ活のミニアプリを作り、そこで表示される広告に対して「興味を持った広告をクリック」「任意の基本情報(年齢・居住地域など)を提供」といった行動をとった参加者にポイントを付与しました。
その結果、9割の参加者が基本情報を入力することを選択しました。また、主要な広告サービスを使った配信と比較すると、CTR(クリック率)が約50%、直帰率は約15ポイント改善しました。
様々な条件でテストしたところ、最も重要な要素が「ポイントの付与」でした。つまり、ユーザーに寄り添う形で、アクションに対する対価を提供すれば、広告の効果は高まるのです。「広告を見ることが価値につながる」と認識してもらうことが重要だとわかりました。

未来型の広告システムはどうあるべきか
有園:広告以外の事業でも、World IDを活用していますよね。地方自治体と実施した地域活性化施策がその一つです。そのような領域で使おうと思ったのはなぜですか。
森田:そもそもWorld IDが普及しなければ、新しい広告システムを作ることは難しい。そのため、World IDの普及支援にも力を入れています。
その一つが、岡山県岡山市の奉還町商店街で実施しているプロジェクトです。商店街のカフェに、虹彩認証によってWorld IDを登録するためのデバイスを設置しました。登録したユーザーはデジタルトークンを獲得し、それを商店街の店舗で使える商品券と交換できます。World IDの価値を高め、地域の活性化を図る施策です。
2025年3~9月に実施した第1弾では、参加人数が2,000人を超え、商品券の流通額は900万円を上回りました。売り上げが大幅に増加した店舗もあります。2025年9月からは第2弾のキャンペーンを実施しています。
有園:World IDの実装に向けて、社会に受け入れられるためにはどうすればいいでしょうか。
森田:地方自治体やパートナー企業との取り組みを通じて、多くの人に体験してもらうことが重要です。自らの意思で自身の情報を管理・提供ができ、その行動によりインセンティブやポイントがたまっていって、それを使って買い物をすることで「いいな」と思ってもらう。そんな体験を重ねることで、サービスを使う人が増えていくのではないかと考えています。
広告主にとっては、本物の人間だけに届く広告を配信できれば、広告費が無駄にならず、正確な効果を測れます。そのメリットを知ってもらいたいです。
有園:MFAによる被害の大きさを考えると、広告主企業にとっては良いことばかりだと思います。今後に期待しています。本日はありがとうございました。
