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良い広告って何だろう? きぬた歯科の事例に学ぶ、話題化だけじゃない広告戦略

「看板を見ると吐き気がする」と言われた時代も

阿部:2023年、きぬた歯科の売上高は16億円で過去最高を達成したそうですね。歯科医院の1店舗あたりの平均年商は5,000万円程度と言われていますから、1店舗でこの数字はとんでもないことです。

阿部:ただ、看板広告の数を増やしているわけではないですよね。これまでの蓄積によって認知度が上がり、来院につながっているのでしょうか。

きぬた:看板を出し始めた当初は「あの顔を見ると吐き気がする」などと言う人もいて、苦情が多かったんです。でも、そういう人たちは所詮他人。「味方ではない」と相手にせず、自分を信じてやり続けました。そうすると、おもしろがってくれる人が増え、好意的な声が聞こえるようになりました。

阿部:最近、広告主の顔写真を載せた看板広告が非常に増えたと感じます。真似をする人が増えることで、元祖であるきぬた歯科の格は上がっているはずです。

きぬた:私が先陣を切ってやってきたので、みんな楽だと思いますよ(笑)。以前は看板広告の効果を聞かれても「まったくない。Web広告が最強です」と嘘をついていたんです。でも、一昨年から「実は看板が最強だ」と明かすようになりました。今や同業者が追い付けないほど数多くの看板広告を設置しましたし、他業種の企業に真似をされても問題がないからです。真似をされたところで、結局きぬた歯科の宣伝になっています。

阿部:看板広告の効果がこれほど蓄積されていくという話は、ほとんど聞いたことがありません。「効いているかわからない」という声が圧倒的に多い印象です。

きぬた:効果を計測できるWeb広告などに頼ってしまうと、ずっとその方法で出稿するしかなくなります。データを見るだけでなく、自分で仮説を立てて「この方法が良いんじゃないか」と考えて実行することも大切です。予算の一部を使って実験的なことにトライしてみるのも良いと思います。

話題づくりだけではダメ

阿部:マーケターは短期的な成果を求められることが多いですし、マーケター自身の評価も半年から一年単位で行われることが多いですからね。もっと長い目で効果を測ることも必要ですね。

きぬた:四半期単位で成果を求められると、看板広告の戦略は成立しません。ここ4~5年は看板広告の数を増やしていませんが、これまでやってきたことが熟成されてきて、売上が右肩上がりに伸びている状況です。

阿部:計測できないものをいかに信じるか。信じるためにも仮説検証が大切ですね。

きぬた:結局のところ、鍵を握るのは“熱量”だと思います。私は自営業者ですから、自分のお金で看板広告に投資をしています。要は命懸けです。会社のお金を使っている感覚があるから「データを計測して終わり」になってしまうのだと思います。

阿部:自分のお金だと思って実行する。“自分ごと化”することが大事なんですね。ここまでうかがった事例から考察すると、完全に話題化を意識していらっしゃいますよね。

きぬた:そうですが、話題づくりだけではだめです。ベースになるもの(=継続的かつ多発的な看板の出稿で醸成された認知)があって、そこにスパイスを加えたり、色付けしたりするイメージです。

阿部:一つひとつの取り組みに、確かな仮説がありますよね。箱根駅伝のスポンサードで言えば、紺色のユニフォームに映える色合いや全国ネットの視聴率など、細かな設計が感じられます。話題化によって駅伝を見た人の印象に残りますし、法政大のOBやOG、在学生や親族などのエンゲージメントも高まったと思います。

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良い広告=〇〇〇〇を狙える広告

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45081

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