「自分らしさ」のプレッシャーからの解放
私たちの生き方や消費行動に大きな影響を与えた「自分らしさ」という価値観が、大きく変化しようとしています。
これにより、従来のマーケティングの前提も大きく変化していくでしょう。これまで私たちマーケティングに関わる者が重視してきた「競争」という概念が希薄になりつつあることもその一つと捉えられます。
「自分らしく生きる=個性的な自分の確立が大切」という認識であった90~2000年代、「自分探し」は生きる上でとても重要な事項でした。たとえば、厳しい就職活動をはじめとする競争社会においては、他者に対して「自分」とは何かを説明することが強く求められました。ただ、実際には、「自分ならではの何か≒個性を打ち立てる」という作業は簡単なものではなく、多くの人にとってプレッシャーであったとも言えます。
コロナ禍を経て、そんな「自分らしく生きる」ということの捉え方や、人々の認識が大きく変わろうとしている――DDDではその兆候を捉えています。
「自分らしく生きる」の意味合いの変化
これまでの「自分らしさ」には、他者=外から見た自分という暗黙の規定がありました。すなわち、外からの目線、外からどう見えるかが重要だったわけです。
しかし、他者と交わることが限りなく減ったコロナ禍で、多くの人が自分自身(と他者とは言えない身内)という存在のみを認識する世界に身を置くことになりました。これにより、他者によく見られるということより、自分自身がどう感じるかのほうが重要であると、価値観にチェンジしていったと考えられます。
結果、自分に素直になる、自分に嘘をつかない、無理をしない、自分が心地よい状態でいられるといったことが、とても大切な要素になってきました。
■「自分らしく生きる」の意味変化
90~2000年代:外からどう見えるか、他者との違い、個性を発揮する生き方
現在:自分自身がどう感じるか、無理せず自分に素直な生き方、他者からの目線はどうしてもよい
もちろん、すべての人にこういった価値観の変化が訪れているわけではありません。次第にこの価値観が広がりつつあるといった状況であると考えています。