新・自分らしさの反対にあるのが「承認欲求」「優越感」?
他者との競争環境の中で自己を見出すという価値観は、人々のどのような欲望を満たしていたのでしょうか?
DDDの11の欲望に当てはめると、「欲望01 承認優越:他人という鏡に映した欲望」と関係性が深いのではないかと推察します。現代の消費者のうち、「欲望01 承認欲求と他社への優越感」が強いと考えられる人たちは、約20%存在します。

『心が動く消費調査 第7回』においても、自分らしく生きているか否かを尋ねた設問では、次のような結果となりました。「他人と同じでいいとは思わない」と回答している人は、合計で19%ほど存在し、「欲望01 承認欲求と他社への優越感」を強く持つ人たちのボリュームと概ね一致します。

今回注目したいのは、個性に囚われた旧価値観の層ではなく、旧来の価値観から抜け出した新たな人々です。自分目線で自分らしく生きる、つまり他者目線は不要。その結果、他人と同じでも違っていてもよいと考えている層。私たちはこの「新・自分らしさ」に突入した人々を「らしさ抜けた!層」と名付けました。
今後、世の中は、個性を捨てて「新・自分らしさ」に向かう、あるいは他者目線を捨てて「新・自分らしさ」に向かう流れがより顕著になってくると予見します。
新たな消費を仕掛けるにあたって、この流れは無視できないものになっていくでしょう。
らしさ抜けた!層が求めるもの
さて、らしさ抜けた!層が台頭してくると、マーケティングはどのように変化するでしょうか? 心が動く調査を分析すると、消費に関連しそうな顕著な特徴がいくつか見つかりました。

らしさ抜けた!層について明快なのは、「人の目を気にしない」ということ。「自分らしければ、人と同じで構わない」ということは「人の目を気にしてばかりいる」ことから抜け出す、ということなのでしょう。ともなって、他者を羨むこともなくなります。
同時に、らしさ抜けた!層は、とても合理的で割り切った考え方をします。お金や時間の無駄を排除する、つまりタイパやコスパを重視する傾向が強い。ゆえに、人間関係においても、割り切った付き合いを好む人が多いようです。
かといって、見た目を気にしない、人と一緒に何かを楽しむことがないということでもありません。自分から見た自分の見た目が良ければ心地よいし、好きな人が喜べば自分も嬉しい、ということでしょう。他人と同じでも構わないと思えるようになると、純粋にアクティブになれるのだと思います。好きなもの、応援したいもの=推しがいる傾向が高い理由も、ここから読み取れます。