アフターコロナのインバウンド動向「国籍・業種別の変化」
二つ目は、「国籍の変化」だ。コロナ禍以前からの成長率が低い近畿地方や中部地方、北海道は、元々中国人観光客の消費額が5~7割を占めていた。しかし、現在の決済額の国別構成比を見ると、アメリカや香港、韓国、台湾などの割合が増え、中国への依存は軽減していることがわかる。
中国は2023年8月に日本への団体旅行が解禁されたが、「コロナ禍以前の19年と比べると、4割ぐらいの水準」と中里見氏。一方で韓国、アメリカといったその他の国の消費がコロナ禍以前の市場を大きく上回っている。
とはいえ、国別構成比のバランスは都道府県によってかなり異なる。たとえば、インバウンド消費の伸び率が特に高い山形県では、台湾・香港が大きな割合を占めている。また、全国では中国の決済額の割合は縮小しているにもかかわらず、高知県では大きく伸びている。これは中国からの豪華客船が高知県に停泊するようになったためだと考えられる。
最後の三つ目は「業種別の変化」。データを見ると、百貨店や免税店、家電量販店、ドラッグストアといった業種の消費額が減少していることがわかる。中里見氏は「『爆買い』でイメージされる業種の決済額が減少傾向にある」と指摘。一方で金額を伸ばしているのはホテル・旅館、飲食店、レジャーなど体験型の業種である。「全体的に、モノ消費からコト消費へシフトしているといえるのではないか」と中里見氏。
中里見氏は、インバウンド業界ではこの三つの変化(エリア・国籍・利用業種)を踏まえたうえで、施策を考えるべきだと提言した。
インバウンド分析でエリア・業態ごとの傾向や国籍の構成比を可視化
こうした現況を踏まえて、Custellaではどのようなインバウンド分析が可能で、どのようなマーケティング施策につなげられるのか。金岡氏が事例を解説した。
紹介されたのは、複数の飲食業態を運営する企業の事例。この企業は「どの国の人がどの業態の店で何を食べているのか」「どんな消費傾向の顧客が来店しているのか」を知りたい、また「コロナ禍を経て、インバウンドの顧客にどのような変化があったのか」を把握したいというニーズを抱えていた。こうした顧客動向を理解することで、店内の言語対応やオペレーション、出店地の検討や、メニュー開発に活かしたいという狙いだ。
こうしたニーズに対して、Custellaではエリアや業態ごとの消費動向分析を提供。たとえば「◯◯区でインバウンド消費が多い」という傾向を捉え、その中で利用者数・利用額の国籍別の構成比を分析できる。さらに、利用業態と国籍を掛け合わせた分析も可能だ。