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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2024 Spring

「今の弱い日本を少しでも明るく」元ネスレ日本 社長 高岡浩三氏が21世紀のマーケターに伝えたいこと

 マーケターは企業のチェンジメーカーとして、その責任や役割を果たしていけるか。MarkeZine Day 2024 Springでは、ネスレ日本の代表取締役社長 兼 CEOを退任後、イノベーション(革新)創出に特化したスクール「高岡イノベーション道場」を自ら主宰するケイ アンド カンパニー株式会社 代表取締役の高岡浩三氏が講演した。道場の卒業生の中から将来日本を代表するようなイノベーションが生まれたらどんなに素晴らしいか――自らのキャリアの最後に掲げる、イノベーションを起こせる人材の輩出について、高岡氏が語った。

この30年、日本は変革も成長もできなかった

 「今の弱い日本を作ったのは私たちの代。土下座をして謝りたいくらいだ。こうして講演をするのも、反省の意がある」

 高岡氏は講演の冒頭でこう語った。昨今、トランスフォーメーションという言葉が盛んに使われるが、日本はこの失われた30年の間、「変革」できなかった

ケイ アンド カンパニー株式会社 代表取締役 高岡浩三氏
ケイ アンド カンパニー株式会社 代表取締役 高岡浩三氏

 株価が30年前に戻ったと喜んでいるのは証券会社だけ。俯瞰で見るとこの30年で世界の株価は平均して6倍ほどになっている。

 読者の実感により近いところとしては、社員の賃金は上がっていないが、社長職の給料は実はぐんと上がっている。「やってきたのは内部留保。その分を社員の給料に回していたら、日本は今よりもっと平均給与が高かったはずだ」と高岡氏は話す。実際、この30年で平均賃金は米国で60%、ドイツで50%、韓国では80%も上がっているが、日本の推移率は0%である(出典:OECD)。

 問題は、日本はなぜ成長できなかったのか? だ。これから先、また同じような30年を繰り返すことになるとは、誰も考えたくないだろう。

プロの経営者とマーケターが育たない仕組み

 日本が成長できなかったのは、昭和時代に新興国の成長モデルで動いてきたからだと、高岡氏は言う。

 第二次世界大戦で負けた日本には、投資家がいなかった。そこで外資に頼ろうとしたが、当時の政府は外資に頼ることを拒んだ。そうして始まったのが世界で類を見ないメインバンクシステムである。

 当然だが、現在大企業となっている会社も、当時は銀行を大株主とする中小企業だった。短期融資に利息をつけて返してもらえば、銀行の事業は成り立つ。これさえ滞りなくできていれば、企業は大株主から何も言われない。だから、売上至上主義でよかった。

 人口が爆発的に増える中、日本人は賃金が安くても真面目に働いた。おかげで低コストで高い品質のものを作ることができた上に、作れば売れた。これが昭和の高度経済成長期における日本の勝ちパターンだ。

 株主によるガバナンスはそもそも必要とされず、経営者は株主総会で「利益を出せ」と突き上げられることもない。プロの経営者とマーケターが育たないのに、利益を伸ばせた。それが昭和だった。

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この記事の著者

佐々木 もも(ササキ モモ)

 早稲田大学卒業後、全国紙で約8年記者を経験。地方支局で警察や行政を取材し、経済部では観光や流通業界などを担当した。現在は企業のオウンドメディアの記事企画や広報に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/01 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45208

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