ブランディングとSEO対策重視、目的が異なる二つのメディア
BtoB企業・サービスの認知向上およびリード創出の施策として重要視されるオウンドメディア運営。まず、サイボウズが2012年5月から運営している「サイボウズ式」で編集長を務める神保麻希氏が同メディアの概要を説明した。
「サイボウズ式は、社名や製品名の認知獲得を目的として開設したメディアです。記事コンテンツを中心に展開し、当社のコーポレートブランディングを担ってきました。当社では仕事のチームワークを支えるグループウェア製品の開発・販売をしているため、『チームワークあふれる社会を創る』というパーパスの認知を広げたいという狙いもあります。
最近では社名の認知度が向上したので、『社名を知っている人にもっと当社のことを知ってもらう』を目標にしています。また、ブランドに楽しさ、身近さを感じてもらうための新たなアプローチとして、InstagramやYouTube、TikTokでの投稿なども行っています。
たとえばInstagramでは、日本と海外のビジネス上での違いや海外ビジネスあるあるについて投稿。これはスイス出身のメンバーを含む企画会議での会話をきっかけにしたもので、多いものでは90万回以上再生されました。このようにより幅広いターゲットに向けて発信できるように様々なチャネルを活用しています」(神保氏)
次にマネーフォワードのSMB本部 SEO・メディア部で部長を務める清水克展氏が専門的なジャンルの基礎知識を解説する「基礎知識シリーズ」について解説した。
「マネーフォワードは家計簿と法人向けSaaSプロダクトの両軸でサービスを展開しています。オウンドメディアとしては、『会計の基礎知識』『人事労務の基礎知識』『契約の基礎知識』といった複数ジャンルにまたがる『基礎知識シリーズ』を展開し、法人向け製品の顧客層が持つ悩みを解決する専門的な記事コンテンツを発信してきました。
オウンドメディアはユーザーとの接点と捉えており、SEO対策に注力しています。ユーザーが検索する幅広いキーワードに対応できるような記事を作り、製品を紹介する機会を生むのが役割です」(清水氏)
施策の評価では定量的な成果だけなく定性面も重視
企業によって目的が異なるオウンドメディアだが、一般的には定量的な数値を活用して成果測定を行いながら運営をすることが多いだろう。しかし、サイボウズ式でのKPI、効果測定方法は異なると神保氏は語った。
「私たちも普段からPV数やSNSフォロー数、媒体別シェア数、ページごとの流入キーワードなどといった定量的な指標も日常的にチェックし、企画作りの参考にするようにはしています。ですが、一番重視しているのは、記事やSNS投稿への感想やコメントの内容といった定性的な成果です。これにより、企画の内容が意図通りに届けたい読者に届いているのかを確認し、メディア運営を行うようにしています」(神保氏)
一方、基礎知識シリーズで重要視するKPIはサイボウズ式のものとは大きく異なる。
「当社では、オウンドメディアをユーザーと当社のサービスとの接点と捉えているため、リードや契約の獲得数といったコンバージョン数をKPIとしています。加えて、各キーワードの検索順位も把握するようにしています」(清水氏)
定量的な指標を重要視する基礎知識シリーズだが、記事制作に対しては定性面も追っているという。
「検索数の多いキーワードだけをコンテンツ化するわけではなく、自社のサービスとの親和性の高さでも企画を考えています。SEOの観点でも、メディアとして特定のテーマ性を強くすればするほど、伸びやすくなります」(清水氏)