サービスのパーソナライズをもたらす「無意識な行動」の解析
人の行動には意識的な行動だけでなく、無意識なものが多い。積水ハウスはPLATFORM HOUSE touchを通じて、玄関ドアの施錠、照明のオン/オフといった自宅ならではの無意識の行動からもログを収集し、人々の行動パターンの背後にある理由を理解したいとしている。
家の間取りは住む人々を想定して作成されるため、間取りから家族構成を推測できる。さらに部屋の使用状況を把握できれば、家の中で何が起きているのかを生活ログとして蓄積できる。
積水ハウスでは、それら生活ログの分類や整理に「生活モーメント」という概念を導入し、活用している。生活モーメントとは、家族との夕食時や外出のためにドアの鍵を施錠する瞬間など、日常のひとコマを示す。たとえば、単純な鍵の施錠という生活ログから、「外出」という生活モーメントを解析すれば、家族がどのように時間を過ごしているかを理解できる。そして、その生活モーメントをさらに解析すれば、住まい手の「行動の源泉」がわかる。これは「安全に暮らしたい」「家族との時間を大切にしたい」「家族を束縛せずに自由にさせたい」といった個人の生活習慣や価値観だ。
吉田氏は、「行動の源泉を理解することにより、より深いレベルでのパーソナライズが実現可能であり、それに基づいたサービスの提供や開発が行えます。我々はこのような世界を目指して取り組んでいくつもりです」と述べ、個々人のインサイトに応えるサービス開発への強い意志を示した。
生活ログから見える行動の源泉
吉田氏は、生活ログからどのような情報が得られるか、二つの具体的な事例を示した。一つは、照明のオンオフと間取りのデータを活用した事例だ。
A邸のケースでは、夕方16時から23時までリビングの照明が点灯している様子が観察され、その他の部屋の照明が消えていることから、リビングが家族の集いの場であり、この時間帯は家族が一緒に過ごす時間であると推測される。23時を過ぎると、リビング以外の部屋で照明が点灯することが確認され、家族が就寝に向かったことが示唆された。
一方、B邸では、19時からリビングの照明が点いているが、子ども部屋の照明が不規則にオンオフされていることから、食事のタイミングが家族ごとに異なる可能性が示された。
このように間取りと照明のデータを組み合わせることで、家庭内の生活様式に関する詳細な洞察を得られる。結果、A邸からは家族との時間を重視する価値観が見て取れるため、この価値観に基づいたサービス提供の可能性が浮かび上がる。生活ログを通じて得られる生活習慣の情報から価値観を導き出せれば、「その価値観に適したサービスを提供することが可能です」と吉田氏は説明した。
もう一つの事例は「安心して暮らしたい」というニーズに関連したもの。ドアの機械的な開閉と鍵の施錠状況に着目した調査を紹介した。この調査では、ドアの開閉と鍵の施錠回数を時間ごとに計測し、1ヵ月間のデータとして集約した。
A邸のケースでは、ドアの開閉回数と鍵の施錠回数がほぼ一致しているが、B邸ではこれら二つの回数が一致しないことがしばしば確認された。一致しないこと自体が直接的な問題を示すわけではないが、このデータを通じて、ドアを開放状態にすることをどの程度許容しているかが判断できる。
このような分析を基に、防犯に関するニーズを把握できれば、それに応じたサービスを提案することが可能になる。セルフホームセキュリティも実装しているため、サッシやシャッターの開閉状態も把握可能であり、その家庭のセキュリティ意識をより詳細に分析できる。
