リスキリングは書籍だけではなく現場で
──松本さんは様々な職種を経験し、大学院に通い、リスキリングを繰り返してきたと思っています。これまで、リスキリングに取り組む上でどのようなことを意識してきましたか。
スキルの身に付け方には、書籍などの教育を通じて知識・スキルを付けていくブックスマート(学校知)が得意な人と、経験から知識・スキルを身に付けていくストリートスマート(日常知)が得意な人に分かれると思っています。まず、自分がどちらを重視しているのか把握するのが重要です。
そして、ブックスマートの人は、リスキリングには向いていないと思っています。たとえば、「1からデータサイエンスを勉強したいので、何の本を読んだら良いか教えてください」と言われても、本を読んだくらいでデータサイエンティストにはなれないですし、十分な分析スキルは身に付かないんですよね。
もちろん書籍から知識を得ることは重要ですし、ブックスマートな方はアップスキリングに向いています。ただ、リスキリングをする上では現場で得られる知識・スキルをある程度身に付けて、そこから足りない部分を書籍や、私のように大学院に通って知識・スキルを得ていくほうが効率は良いと考えています。
また、人によってはブックスマートもストリートスマートも身に付いていない人もいると思っています。たとえば、「今の仕事で頑張っても頑張らなくても正直評価は変わらない」と思って学ぶ習慣が身に付いていない方。そういった方は、どこかでたくさん本を読んで知識を身に付けるか、現場で仕事にのめりこむか、どちらかに振り切る努力が求められます。
──松本さんは現場でデータサイエンティストの経験を得てから、大学院でデータサイエンスの学び直しをする、ストリートスマートからブックスマートに移行しています。ご自身がストリートスマートだと気づけたきっかけはあったのでしょうか。
どの職種にもスペシャリストはいると思うのですが、その領域に到達できないと24〜5歳で気づいたんです。野球で言えば、エースにも4番にもなれない。でも、ここぞというときに登板する中継ぎ投手やいろいろなポジションを守れるスーパーサブのようなキャリアが作れるんじゃないかと気付きました。そこから様々な職種をストリートスマートで渡り歩き、横断したスキルと知識を会得していきました。