「トレンド×企業の強み」でバズを生み出す
では、実際にTikTok運用を成功に導くためには、どのようなことを行えばいいのだろうか。寄藤氏は「3つの秘訣がある」と話し、それぞれを解説した。
1つ目は、バズを引き起こす企画作りだ。トレンドと企業の強み掛け合わせることで、その企業アカウントがやっている大義をつけると共に、ユーザーに喜ばれる内容を提供できる。
「今はショートドラマがはやっています。そこで我々の強みであるバイトと掛け合わせ、きゅんとするエピソードを作成しました。こちらは大人気シリーズとなりました。重要なポイントは、企業が伝えたいことやトレンドだけに寄り過ぎず、50:50で掛け合わせることです」(寄藤氏)

2つ目は、3秒維持率をKPIに置くことだ。分析ダッシュボードを更新し、毎週定例で確認する中で、動画再生開始から3秒以上視聴維持できているかという「3秒維持率」を評価することでバズの確率が飛躍的に向上することを発見。実際、同社が初めて投稿した動画は3秒維持率が39%だったが、半年後には54%まで改善した。3秒維持率が72%にもなると再生回数は1,300万回に向上した。

3つ目の秘訣はコメント欄を掲示板として活用することだ。担当者が一人ひとりにコメントを返すのは負荷がかかる。そこでZ世代のユーザー同士で盛り上がるお題を意図的に設置することで、自然に盛り上がる仕掛けをいくつか作成した。

TikTokはコメント欄を掲示板として活用することが多く、動画だけではなく、コメントにいいねがつく。コメントに返信がつき、フォロワー同士が伸びていくことで、エンゲージメントに大きな効果をもたらす。
「これら3つのポイントを一つひとつ試行錯誤しながら投稿していった結果、登録者50万人増、2億回の再生回数を達成できました」(寄藤氏)
フレーム×戦略×強みで、企業は最強のインフルエンサーになれる
寄藤氏は、SNSコンテンツマーケティングについて「フレームと戦略さえあれば再現は可能です。そこに独自性を掛け合わせることでSNSの中で広く共感を生めます。そういう意味では企業は最強のインフルエンサーとなりえる存在」だと話した。企業の強みとミームを動画に盛り込むことでバズる動画ができ、ユーザーの興味をひくことができるのだという。
注意しなければならない点は、決して上からのコミュニケーションではなく、友達感覚の立ち位置であることだ。ディップでは、小学生の放課後の会話程度の温度感や距離感を意識したコミュニケーションをしている。
ディップは現在、企業SNSをマネタイズすることにも挑戦。「ビスリアル」という企業の魅力や職場理解を促すための動画制作サービスを開始した。すでに数社の動画を制作・投稿しており、企業好感度や応募意欲度、職場理解度の向上など、一定の成果を出していると話した。
寄藤氏は最後にSNSの可能性について話し、同セッションを締めくくった。
「SNSにはこうあるべき、という形はありません。いくらでも変容・進化ができます。新卒の採用人事の活用など、組織拡大に使うこともできます。TikTokやYouTubeが仮に衰退してきても、次のSNSでもフレームと戦略さえ用意できれば誰でも再現できるのだと思っています」(寄藤氏)