マーケターにはファイナンス部門とは異なる視点も求められる
――「今期の売上・利益」などは自分の業務の先にあるものとして意識できそうですが、中長期で事業成長を目指す思考は身に付けるのが難しそうです。
そうですよね。ですから私は売上や利益、シェア率などの「結果指標」とは別に、中長期的に見通しを立てるための材料となるような指標を持つことが重要だと考えています。 その一つの選択肢が、ブランドに対する顧客認識の状態を数値化し、競合と比較できるようにする指標「ブランド・パワー」です。これはマーケティングの新指標として提案しているものですが、ファイナンス視点を持ったマーケティング手法でもあるとえています。
ブランド・パワーとは
売上・利益をゴールにブランディングの効果検証を可能にするフレームワーク。売上と利益を生み出す要素の一つとして「ブランドが持つ力」にフォーカスし、それを数値化することで、中長期的にブランド力の向上を試みるもの。
売上・利益をKGIにしブランディングの効果検証を実現するためのエッセンスが解説された木村氏の書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』
―― なぜブランド・パワーを用いることで、マーケティングにファイナンス思考が取り入れられるのでしょうか?
ブランド・パワーを継続的にトラッキングしていくと、将来の売上・利益を予測し、どこにマーケティング投資をすべきか、論理的かつ明確に考えられるようになるからです。売上・利益など一般的な結果指標から未来の数値をシミュレーションすることも可能ですが、不確実性の高いこの時代、そこにはあらゆる要素が複雑に絡み合ってきます。市場の変化や競合の動きなど、自社ではコントロールできない外部要因も多いでしょう。
そのような中で中長期的に売上・利益を高めていこうとするとき、マーケティングにおいて重視すべきは、やはり日々のマーケティング活動の結果として高めていける「ブランド」だと考えます。ブランド・パワーを用いると、ふわっとしてしまいがちなブランドへの投資とその結果が可視化されるので、無意識にコストセンターとなってしまう状態から脱することができるはずです。
私の経験上、ブランド・パワーは確実に売上と連動します。ブランド・パワーが上がっているのに売上が下がっていくというようなことはなく、逆もまた然りです。ブランドの未来の価値を高め、売上を作っていかなければならないマーケターには、結果指標で物事を捉えるファイナンス部門の人たちとはまた違う視点が求められてきます。ブランドを事業資産と捉え育てていくことで、中長期的に事業リスクを下げ、伸びしろを作っていく。そういった意識を持つとよいのではないでしょうか。
