業種を絞り、競争の軸をずらす
有園:広告とコンサルの業務が近づいてきて、「課題の発見と解決」という領域でコンサル企業や同業他社との競争も激しくなっているのですね。
大山:そういった競争に勝てるようにするために取り組んでいるのが、「クライアントのポートフォリオ」「ソリューションのポートフォリオ」、そして「人材のポートフォリオ」の変革です。
クライアントのポートフォリオは、他社と競争の“軸(領域)”をずらすために変える必要があると考えています。以前のようにマス広告中心で戦うなら幅広いクライアント企業が不可欠ですが、マス広告を主軸にしないなら、当社を必要とするクライアント企業の業務に集中できます。今は、当社が得意な分野とこれから強化すべき分野の10カテゴリーほどを注力クライアントとして対応しています。
その一つが、金融・保険。中堅クライアントから実績を作り、今は大手の広告も取り扱っています。銀行なら地方銀行が強いです。また、ゲーム・IP関連の企業や、D2CやEC、BtoB、SaaSのクラウドサービス提供企業などに対しても強みを発揮できると思います。
有園:大手よりも中堅の企業を増やしているのですか。
大山:結果的にそうなっていますが、今は市場が大きくても、今後大きく成長しない業界もあります。それよりも、今は有名でなくてもこれから伸びる企業を探しています。
3つのソリューション領域で変革を
有園:独自戦略で成長を目指す土台には、事業ブランドとして掲げる「ADK CONNECT」があるのだと思います。具体的には「顧客データ&インサイト」「顧客体験デザイン」「顧客接点マネジメント」の3つの事業領域を連携させて成果を出す、と掲げていますが、どのようにクライアントの課題解決に貢献するのですか。
大山:その3つの領域は、ソリューションのポートフォリオ変革として強化しています。
まず、顧客データ&インサイトは「クライアントの顧客を最もよく知る会社になる」ということです。データ分析や提案に関わる人員を従来の3倍の150人に増やしました。そこには、データサイエンティストやストラテジックプランナーのほか、事業会社から来た人たちもいます。
“広告脳”を培ってきた人だけでなく、事業会社で苦労した経験がある人を生かして、クライアントごとに最適な人員をアサインしています。この部署が先ほど話した、クライアントの顧客を分析することで多くの課題発見の起点となっています。
2つ目の顧客接点マネジメントは、ワンルーフでPDCAを回しクライアントの課題を解決していきます。デジタル領域を分社化して成功した広告会社もありますが、当社の場合は、クライアントの利便性を高めてパートナーとして頼ってもらうためにはワンルーフが最適だと考えています。様々な案件で、各地域の支社と本社(東京)でワンチームとして運営していて、必要なソリューションとスキルは東京が提供することで、地方銀行などのローカル企業の実績も伸びています。
3つ目の顧客体験デザインでは、フルファネル型のクリエイティブでのブランディングに加え、カスタマージャーニーの仕組み・仕掛けの体験設計をすることにより、クライアントの課題解決につなげていきます。
