いきなり情報を発信してはいけない
「情報発信の前にまず行うべきは、自社の言語化です。企業の成り立ち、存在意義、価値観など『自社が何者なのか』を言語化しない以上、真の意味でのコンテンツ化は不可能ですし、情報発信はできません。ただMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を言語化するだけでなく、その裏側のストーリーや思いを織り込みながらコンテンツ化して、機能する状態に持っていく必要があります。情報発信のための情報発信になってしまうのは、お金と時間の無駄です」(竹村)

情報発信しようとする全ての企業に言えることだが、中心にある核を明確にして言語化しない限り、その先はないだろう。核がない状態でマーケティングや広報、人事施策などを工夫したとて、それはどこまでいっても表面的で小手先のものになってしまう。
企業の核をあぶりだすという意味において、顧問編集者の仕事はコーポレートコーチングに近いサービスであるとも言える。一石で何鳥も得られる点こそ、高額な顧問編集者への依頼が途切れない理由なのだろう。
「結局のところ、人間は人間に魅力を感じる生き物です。特に昨今のインターネットは、企業よりも個人がフィーチャーされる世界。企業として発信するよりも、一人の人間として発信したほうが熱は伝わりやすいんですよね。だからこそ、経営者はもっと前に出るべきだと思いますし、それがあたり前の時代になると感じています」(竹村)
経営者の一貫した発信が信頼を生む
筆者は、現代におけるキーワードを「信頼」だと考えている。これは企業においても個人においても同様だ。では、信頼は何によって醸成されるのか? きっと情報を発信し続けることによって生まれるのだと思う。SNSでの発信、note、ブログ、インタビュー記事などで継続的に発信される思考や思想、スタンスが信頼を形作っていくのだ。
言うまでもないが、インターネットの世界では情報を発信しなければ検索エンジンにインデックスされることもなく、タイムラインで偶然見つけてもらうこともない。ゆえに情報を発信し続け、コンテンツをデリバリーすることが重要なのだ。
「既に一部の広告や『#PR』のようなものは、信頼されにくくなっていますよね。今後はさらに嫌われるようになると思うんです。人間は恐らく、対象が信頼に足るものかどうかを感じる第六感を持っています。その言葉が真実でないことを本能的に理解してしまうわけです。だからこそ、嘘のない“本当の言葉”を経営者が発信していくべきなのではないでしょうか」(竹村)
大切なのは一貫性だろう。変わらない思想、変わらない価値観。つまり、ブレない一貫性が信頼を生み出す根源になり得る。そしてその一貫性が、企業の核となり得るのだ。これからの時代、より広く、早く、深く企業のことを知ってもらうためには、経営者が前に出る必要があるだろう。経営者の言葉が世界を変えると言っても過言ではない。