心が動く好循環消費から導いた「5つの構図」
ここから後半です。これまでの内容に定性分析も加え、調査対象者の自由回答から垣間見えてきた好循環消費の5つの構図について解説していきます。
具体的には、消費者一人ひとりの具体的な消費実態を深掘りし、好循環消費に至る「消費循環のパターン」を類型化した結果を用いながら、好循環を生み出すマーケティングやプランニングのヒントと、企業や商品にもたらす効果に関する考察についてご説明したいと思います。
DDDでは、好循環消費のパターンを見出すために、日本全国の20~70代の男女3,000人の自由回答を読み込み、好循環消費をしていると思われる40名について分析を行いました。消費者の「心が動いた消費」はどんな商品やサービスで、なぜそれを購入して、その体験によって生活や気持ちにどんな変化があったのか? そして、最初の消費をきっかけに、次にどんな新しい欲望が生まれ、その欲望を満たすためにどんな行動をしたくなり何が欲しくなったのか?
これらを読み解いていくことで、消費者の心が動く好循環消費を、次に挙げる5つの構図として類型化しました。

「自分的な新・商品価値」を発見すると新たな欲望が生まれる
今回は、5つの構図の中から「自分的な新・商品価値の発見」の構図に焦点を当て、その具体的な内容を説明したいと思います。

「自分的な新・商品価値の発見」の構図は、心が動く消費をしたことで、「本来のブランドの価値以外の自分ならではの独自の価値文脈を発見し、それによって次の新たな欲望が生まれた」というパターンです。
これに該当する代表的な事例が、Aさん(20代男性)の回答。Aさんは、ホンダのテーマパークに行き、高級外国製スポーツカーの体験走行会を体験、「その走りの世界に感動した」と回答しています。このモータースポーツの「非日常的でエクストリームな体験」が、Aさんの固定概念を揺さぶり、自働車やバイクへの興味を増幅させたのでしょう。

さらにAさんは同パーク内のミュージアムで、ホンダの歴代の展示車を鑑賞します。ブランド固有の歴史や思想という“ストーリー”を学ぶことで、今度は、そんな背景をもつブランドの新車やバイクが欲しい、という新たな消費の欲望を掻き立てられたのです。
また、今年中にしたいこととして「この車種のマニュアル車を購入したい」と回答。その理由は「走りを楽しむとともに、祖母の通院や買物など日常的な生活ニーズにも役立ちそうだから」とのことでした。広告やホームページ、カタログなどで詳細な商品情報や使い方を知ったのでしょうか。このブランドの「機能やバリエーション」が、趣味性と利便性、自己満足と他者満足という、Aさん独自が欲している利用価値を兼ね備えた商品だとわかり、新たな購買意欲を喚起する重要なドライバーとなったことがわかります。