より高度な人材育成と連携強化でプレゼンスを向上
──マーケティングは、社内の変化を促すのにも重要な立場なのですね。帯刀さんは企業においてマーケティングが果たすべき役割はどんなものだとお考えですか?
個人的な視点ですが、「お客様とプロダクト開発の間に立って現状を整理し、新しい価値や新しい事業をつくること」だと考えています。クライアントのことを考えるあまり、各ユニットの開発部門がスピード重視で個別に製品開発を先行させてしまうことも理解できます。そこで開発を含めた采配を私たちマーケティングが担保して、クライアントのニーズを把握し、効率よく投資が回るように客観的にフィードバックする取り組みをしています。
たとえば、2023年から当社開発の生成AI「cotomi」を提供していますが、マーケティングや事業開発など複数部門のメンバーでチームを形成し、ビジネス開発からサービス化まで推進してきました。昨年、自治体と企業向けにそれぞれ特化したモデルを開発して実証を始めていますが、このプロジェクトにも全体的にマーケティングが関与しています。完成後に参加してプロモーションを打つこともありますが、コンセプトを策定する上流の段階から入ることでビジョンを明確にし、成果につながっていると感じています。
とはいえ、BtoBマーケティングは複雑で正解はありません。私自身グローバル企業のマーケティングリーダーと積極的に交流し、学んでいる最中です。あるIT企業のCMOがマーケターの役割として教えてくださった「see more,keep more,win more.」という目標感が印象的です。昨日より今日、今日より明日、何かをより可視化したり評判を維持したり、クライアントとともに価値を創造して“勝って”いく、という意味だと解釈していますが、私も日々模索中です。
──人材育成と組織強化も、取り組みと目指すところを教えてください。
人材に関しては、業界の様々な経験者を迎えてダイバーシティを担保しながら、海外拠点も含めた社内の経験値を共有していきます。
組織については、この4月にさらに改変しました。横断的なマーケティング組織と並行して、業種単位の各ユニットにもその業種に精通したマーケターがいました。金融、流通、製造など業種や事業が異なると、それぞれのマーケターが深いナレッジをもってデジタルマーケティングや展示会などを展開しており、社内でも手法や文化が違います。
これまでも両者は連動していましたが、組織的にワンチームにしました。これはかなり大きな動きです。業種ごとに必要な業務や知見の蓄積を継続しつつ、人材の流動化も図って、広くも深くも動ける高度なプロフェッショナル人材を育成したいと考えています。

この1年は上流からマーケティングができる体制を整えましたが、事業側のメンバーとさらに連携を深め、各クライアントの課題に即して柔軟に運営できるようにしていきます。すると事業側の知見をもっと活かしてクライアントに貢献でき、経営におけるマーケティングの存在感も高まると思います。