イベントを成功に導くために大切な前提とは
この連載では、目的別・ターゲット別のイベント設計の考え方から集客設計、集客期間中のデータ活用、イベント開催中~終了後のデータ活用の各ステップについて解説してきました。連載に書いてあることを一つひとつ確実に実施していけば、イベントを成功に導ける可能性は高まるでしょう。
ただし、その前提として最も大切なのは「WHY」、なぜイベントを実施するのかという目的を明確に設定することです。
目的を明確に設定すれば、各ステップの施策の設計や実行がスムーズになり、決断もブレません。また、開催後の分析・検証も意味のあるものになり、次回の改善にもつなげやすくなります。
もし「WHY」なきイベントを開いてしまった場合、どんなに高度なテクニックを駆使したとしても、各施策はもちろんイベント自体が成功したかどうかまで検証が不可能になってしまうでしょう。
「イベント=オフライン」には戻らない
イベントは今後、コロナ禍の反動もありオフライン開催への回帰が進んでいくことは間違いありません。しかし、完全に以前のようにオフラインイベントだけの時代に戻ることはないと私は考えています。
なぜならば、ここ数年で参加者、主催者ともにオンラインイベントを多数経験し、オンラインならではのメリットを理解し享受してきたからです。今後は、目的に応じた明確なオフライン/オンラインの使い分け、それぞれをいかに価値付けしていくかが今後重要になってきます。
オフラインイベントとオンラインイベントの目的やターゲット設定の違いについては第1回をご覧いただくとして、ここからはそれぞれの特長をいかに活かし、イベント設計を行うべきかについてお話ししたいと思います。
オフラインイベントは「セレンディピティ」が生まれやすい設計を
まずは、これからのオフラインイベントの在り方について考えていきます。先ほども述べたように、今後も時間や場所に縛られないオンラインイベントが開催される環境下では、あえてオフラインイベントに行きたいと思わせることができる付加価値が必要になってくると思います。
そこでヒントになるのがオンラインイベントで感じる物足りなさです。近年オンラインイベントを多数経験する中で「やはりオフラインではないと得られないものがある」と感じた人は多いのではないでしょうか。
その物足りなさの正体は、イベントで偶然久しぶりの知り合いと再会して思いがけず新しいビジネスの話が芽吹いたり、登壇者と直接コミュニケーションをとることで新しい関係性が生まれたりするなど、情報を得る以外の新たな価値に偶然出会う”セレンディピティ”だと私は考えています。
そのため、今後のオフラインイベントではこれまで以上に「セレンディピティ」が生まれやすい場の設計を行うことが求められてきます。セッションが終わった後に登壇者と交流できるスペース、イベント主催社の営業担当者や役員とユーザーがその場ですぐにコミュニケーションをとれるプログラム、参加者同士の交流会など、セレンディピティを生み出す方法は数多く存在します。

また1日に複数のセッションを擁するイベントであれば、休憩スペースを設け飲み物や軽食を提供し、ネットワーク環境を整備するなど、参加者がストレスなく長期滞在できる設計も重要です。その他にも、セッション中の質問コーナーやアンケート結果により進行するセッション構成などインタラクティブ性を重視したり、会場でしか見ることのできないコンテンツを用意してプレミアム性を高めたりすることも考えられるでしょう。
これらの体験は、もちろん良質なコンテンツ(セッション)があることが前提に成り立ちます。ただ、コンテンツの内容以外の「オフラインならではの体験」を充実させていくことが、今後のオフラインイベントには求められてきます。
