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有園が訊く!

不透明な時代、ネット広告の「不都合な真実」にどう向き合うか【杉原剛×有園雄一対談】


 生成AIなどのテクノロジーの進化に伴い、デジタルマーケティング業界はさまざまな課題に直面している。その一つが、広告収入のためだけに作られたWebサイト、MFA(Made-for-Advertising)の氾濫だ。長年にわたって多額の広告費がMFAに流れている。さらに、サードパーティCookieの廃止に向けた対応策も大きな課題となっている。これらの課題と、その背景にある不都合な真実について、Microsoft Advertisingの事業責任者を務める有園雄一氏が、アタラ 代表取締役CEOの杉原剛氏と対談。現状と対策について議論した。

“広告だらけ”のサイト、MFAの収益構造

有園:デジタルマーケティング業界に今、大きな影響を与えているのがMFAです。このようなサイトはSEO(検索エンジン最適化)を悪用しており、Googleなどの検索エンジンのクオリティが下がっているという調査結果も出ています。

 その実態について、よく知らない人も多いでしょう。あらためて、MFAとはどういうものでしょうか。

杉原:Made-for-Advertisingという通り、簡単に言うと広告のために作られたWebサイトです。このようなサイトは実は昔からあって、アービトラージ(Arbitrage/アビトラ)サイトと呼ばれてきました。

 MFAの特徴は、コンテンツに対する広告比率が異様に高いこと。広告だらけのサイトです。また、掲載されているコンテンツは低品質で、ひな形を使って作成されています。古いコンテンツが再利用されることも多いです。

 2023年には、主要な広告業界団体のANA(全米広告主協会)、4As(アメリカ広告業協会)、WFA(世界広告主連盟)、ISBA(英国広告主協会)がMFAの定義や特徴について発表し、問題提起しました。また、ANAの調査では、オープンウェブのプログラマティック・メディアの広告費のうち、約23%に当たる200億ドルが適切な広告投資として機能していない、という結果も出ています。

アタラ 代表取締役CEO 杉原剛氏
アタラ 代表取締役CEO 杉原剛氏

MFAと共存共栄するプラットフォーマー

有園:MFAの基本的な構造は、広告トラフィックを安く仕入れて、広告枠を高値で売って利ざやで儲ける。そのため、金融用語であるアービトラージ(裁定取引、利ざやで稼ぐ手法)が使われていますね。

 具体的にイメージすると、検索連動型広告を活用したサイトを作り、1クリック当たり10円のコストをかけてアクセスを誘導したとします。1インプレッションで1円の売り上げを得られるとすると、1ページに100個の広告を貼れば、1ページビュー(PV)で100円の売り上げとなり、90円の利益が出る。テンプレートを使ってコンテンツを作成すれば、制作費もかからない。手を掛けなくても、1PVで90円儲かる、という構造ですね。

杉原:そういう構造なので、やはり生成AIの登場はMFAの拡大に大きく影響しているでしょう。サイトの作成、コンテンツ制作、広告掲出など、全て自動でできるため、制作費はほぼかかっていないでしょう。データ分析による収益のモニタリングまで自動化されています。

有園:検索エンジンを運営するプラットフォーマー側は、例えば「広告枠が10個以上あるページを検索結果から除外する」ということも技術的には可能ではないでしょうか。

杉原:巨大プラットフォーマーの場合、売上高が大きく落ちれば株価にも影響します。その結果、MFAと共存共栄してしまっている。最近では、大手経済紙がMFAサイトを運営していたことも明らかになり、大きな衝撃でした。

有園:みんなが「不都合な真実」を抱えていますね。

杉原:まさに。プラットフォーマーはMFAとも共存共栄し、売り上げを減らせない体質になってしまった。パブリッシャーもMFAが横行していることに気付いていながら放置している。広告主も同じで、MFAであろうとインプレッションを稼げているから困っていないという企業が多い。みんなに不都合な真実があるというのが、この問題の根深いところです。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/06/07 08:56 https://markezine.jp/article/detail/45586

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