音声コンテンツ制作で見落としがちな「基礎」
━━先ほど、音声コンテンツの役割としてもお話しいただきましたが、リスナーに推してもらえるのは大きな強みなんですね。
福井:2つの事例の共通項としてもいえますが、スポンサーはリスナーと一緒に番組の推し活をしているということがきちんと伝われば、リスナーとスポンサーは同じ方向を見ている推し仲間の関係を結ぶことができるんです。
また、ラジオやポッドキャストは聴くことが習慣化される方も多いです。「週に一度は同じ企業のCMを聴く」「毎月一度はタイアップの企画で触れる」という習慣もできるため、その点でもリスナーの熱量を持続的に高めることが得意だと感じます。

━━少し目線が変わるのですが、昨今「音声コンテンツを制作する側」も増えていると思います。御社はラジオ局として培ってこられた制作力も強みだと思われますが、改めて求められると感じる能力、要素はありますか?
福井:ラジオ局のコンテンツは、出演されている方も喋りのプロでわかりやすく話していただけますし、制作側も経験から構成を整えるのが得意ですから、番組として一定のレベルを担保するのが特長であり、一つのフォーマットです。ただ、世の中にそうではないコンテンツも当然あって良いと思っています。
YouTubeにテレビのような作りの動画も、ただ雑談しているだけの動画もあるように、様々なフォーマットのなかで何が受け入れられるのかはそれぞれが試していけば良いのではないでしょうか。
ただ、一つ挙げるとすれば“音質”は重要だと感じます。動画コンテンツにおける画質は目に見えてわかりやすいので直しやすいものだと思います。ただ、音声コンテンツは音量、マイクの位置や使い方など細かな違いでも、聴きづらくなってしまうことが多いんです。音が聴こえづらいことはそれだけでストレスになります。今はスマートフォンのマイクでも音質は良くなっていますが、もし良いコンテンツを届けたいのならば、もっと力を入れても良い部分だと感じます。

音声広告業界への追い風で選択肢としての確立へ
━━最後に、今後の展望をお教えください。
福井:やはりコンテンツが主体であり、コンテンツから生まれることがすべてだと感じます。リスナーにもスポンサーにも良い影響を与え、人を動かせるコンテンツを今後も作り続けていくことは大きなミッションです。
もう一つは、音声広告そのものを広めること。当然拡散力ではSNSが、リーチはテレビが強いというイメージはあると思いますが、独特の結びつきの強さからエンゲージメントを高められ、購買行動を促せるのは音声ならではの強みです。
広告の効果計測が当たり前となるなか、思うようにいかない結果に気づき、次の打ち手を探すときに、新たな選択肢として選んで試していただける方を少しでも増やしたいです。デジタル広告の世界をリードしてきたGoogleが動き、YouTubeでもポッドキャストが聴けるようになるなど、業界として追い風が吹いているのが今です。ラジオ局だけではできないことにも手を取り合って挑戦していきたいと考えています。
