博報堂DYグループのデジタルコア新会社が誕生
有園:博報堂DYグループの新会社として、4月にHakuhodo DY ONEが誕生しました。今回は、小坂さんに意気込みを語ってもらう場になればと思っています。新会社は、デジタルマーケティング業界でも非常に注目されています。まずは設立の背景や趣旨を教えてください。
小坂:博報堂DYグループが6月に発表した新中期経営計画の中でも触れていますが、新たな成長を描くための取り組みの一つとして新会社の設立を掲げています。
博報堂DYグループは博報堂グループ、大広グループ、読売広告社グループといった複数の大手エージェンシーを傘下に持つことが特長です。これまではそれぞれの企業がユニークに事業展開するという方針でした。しかし、競争激化によって、グループの枠組みを超えて連携する必要性が高まりました。
新中期経営計画では、従来の「広告会社グループ」から「クリエイティビティ・プラットフォーム」へ変わる、という方針を打ち出しています。デジタル領域もその方針によって組織を再編しました。
小坂:さらにもう一つ、クライアントがエージェンシーに期待することが変わってきた、という背景もあります。広告効果の最大化だけではなく、“一歩先”を見据えた提案を求められるようになりました。2、3年後の目標を見据えた取り組みも増えています。そういったニーズに応えるのは、デジタルエージェンシーだけでも、従来の大手総合広告会社だけでも難しい。双方を融合して、クライアントの事業成長にコミットできるようにすることも新会社設立の狙いです。
デジタルで勝つための「フォーメーションの最適化」
有園:私も誤解していましたが、Hakuhodo DY ONEは単純な「アイレップとDACの統合」と捉えられがちです。実はそれだけではなく、その2社はもちろん、ブランドエージェンシーや博報堂DYメディアパートナーズなど、グループ各社からメンバーが集まっている。そんなイメージでしょうか。
小坂:主体はアイレップとDACですが、グループ企業からもデジタルに強いチームに入ってもらっています。また、デジタル中心のコミュニケーション戦略を描いているクライアントのチームも、ブランドエージェンシーから当社に移り、一緒に取り組んでいます。これは今までにない取り組みです。
これまでブランドエージェンシーが担うデジタル領域の支援はDACが主体だったため、営業のフロントラインで言えば、ブランドエージェンシーの後ろの1.5列目、2列目で運用しているイメージでした。アイレップの営業組織を生かせば、1列目からデジタルの営業体制を作れます。デジタルに精通している担当者を付けてほしい、というニーズも増えています。
有園:従来の大手広告会社の組織では、広告を配信するプラットフォーマーと広告主の間に、広告会社のメディア担当やアカウントマネジメント担当、業務推進、営業など、いくつかの部署や担当者がいる構造です。マス広告には最適化された組織ですが、デジタルの場合は必ずしも最適ではない。一方、デジタル専業のエージェンシーでは、間に入る部署や担当者が少ないため、運用型広告の配信やPDCAのスピードは速くなります。
小坂:まさに、今回の新中期経営計画で進めるミッションの一つが「フォーメーションの最適化」です。デジタル領域でのパフォーマンスと生産性を高めるためのフォーメーションにする必要があります。また、先ほどもお話ししたように、クライアントに求められることが広告効果から事業成長へと変わってきています。そのニーズに対応するためにもフォーメーションの最適化が必要です。