企業やマーケターは変化の中、どうすべきか
このような消費動向の変化の中、企業やマーケティング担当者が向き合うべきこととして、長田氏は「社会課題を共創型で解決し、新しい価値を作ること」を挙げた。
競争が激しい市場で、ブランド価値を創造することは容易ではない。機能性だけを訴求しても差別化は難しくなっている。そのため、多くの企業は仲間作りやブランド価値の創造方法を模索してきた。
そしてコロナ禍による人々の価値観の変化を経て、新たな視点が生まれている。それが社会課題を共創型で解決し、新しい価値を作ることだ。たとえば渋谷センター街のゴミ拾い活動の場合、個人も企業も「渋谷のゴミをゼロにする」という共通のミッションを掲げて活動している。

「社会課題の解決を目指し、ともに体験することが大きな価値となっています。共創プロセスを通じて、様々な人々を巻き込みながら新しい価値を生み出すことが、これからの企業のあり方として重要になるのではないでしょうか」(長田氏)
「商品を売ったら終わり」ではない
続いては、企業のブランディング支援を行っている大村氏が、現在は物質や現実にとらわれない「風の時代」が到来しており、これはリキッド消費の拡大に通じると語った。対するこれまでのソリッド消費は、モノ主体の「地の時代」だったと表現。その上で、企業のブランドコミュニケーションも、今後はより情熱的に個性を重視した非再現性の演出を行う方向へ進んでいくことが重要だという。

従来のソリッド商品では、モノの交換時点で価値の交換が完了していた。ギターを例に挙げれば、「他の人が持っていない、かっこいいギターを手に入れた」と感じることに価値が置かれていたのである。
一方で体験を重視するリキッド消費では、購買後の使用価値に重点が置かれる。「かっこいいギターを所有していること」は体験の一部に過ぎない。購入したギターを使ってアーティストと一緒に楽しめるバンド体験など、その人・その場でしかできないことが重視されるようになるのだ。このことから、企業は「商品を渡すまで」ではなく、その後のLTV向上に力を入れる必要があるだろう。

さらにシェアリングの概念を取り入れ、大量生産を抑制しつつ環境負荷低減の取り組みを進めることは、メーカーにとって死活問題である。従来のビジネスモデルが崩壊する可能性もあるが、時代に乗り遅れれば、顧客から見向きもされなくなると危機感を持つメーカーは少なくない。
つまりシェアリングなどの新しいビジネスモデルを活用し、顧客と購買後も関わりを深めることでLTVを高め、新たな価値向上につなげることが重要である。