価格上昇にともなう「コスパ意識」の上昇
前回の記事で説明した通り、2023年度までの消費動向には、「コロナ禍明け」というキーワードが浮かび上がる。コロナ前からの変化として、消費者の興味が細分化され、消費行動の多様化が顕著になっている。特に、それぞれの興味対象に対して時間やエネルギーを注ぐ傾向が強まり、選択と集中が進んだ。この変化は、消費者が自分の興味に対してより積極的に投資するようになったことを示している。では、今後どうなるのか。今回は、2024年以降のトレンドを予測する。
まず、今後の消費動向を予測すると、コロナ禍明けで加速した「消費の多様化」の特徴を引き継ぎつつも、価格高騰に対するリアクションが加わると予想される。現在、円安および原材料価格・物流費の高騰が続き、食品やサービスなど幅広い分野で値上げが続いており、家計への圧迫が続いている。
これにともない、消費者の意識も変化し、値上げラッシュの2022年以降、「できるだけ長く使えるものを買う」「価格が品質に見合っているか検討する」といったコスパ意識が上昇している。そのため、消費者は同じ商品を安く買うためのバーゲンハンティングや、安価な商品へのブランドスイッチ、購買量を減らす買い控えなどの行動を取ることが今後加速していくだろう。この傾向は消費者が限られた予算の中で最大限の価値を求めるための合理的な行動だと言える。
安すぎるだけではダメ!求められる商品の“価値実感”
このように、消費者は価格高騰にともないコスパ意識が向上しているが、この対応は商品カテゴリーによって異なる。たとえば、生鮮食品では安ければ良いというわけではなく、安すぎることで安全性を気にしてしまう人も多く、購入を避けられてしまうことも少なくない。また、日用品はブランドへの慣れ親しみが強いため、相対的に価格の影響は弱くなる。
このような商品カテゴリーごとの対応種類を大別すると、次のようなグループに分類できる。
- ブランドへの慣れ親しみが強い「聖域グループ」
- 必需性が低い「嗜好品グループ」
- ブランドへの慣れ親しみが強いが消費が速い「消耗品グループ」
- 安すぎると品質が心配される「品質足切りグループ」
これらの各グループへのアプローチに加えて、商品の価値を高めて商品のコストパフォーマンスを上げることが今後は、全グループに対して共通で求められる。ちなみここで言う商品の価値は商品の質や量だけではなく、商品の価値実感を高めることが重要になる。
では、価値実感を高めるためには具体的には何をすれば良いのだろうか。