広告効果のコントロールができない今、行うべきこととは?
理由としては、広告出稿量の最適配分の把握が消費者によるメディア利用の複雑化にともない難しくなり、テレビやデジタルなど大枠での配分しかできなくなるためだ。現状でも、ほぼこの粒度でしか実効性を持った分類ができていないケースが多いのではないだろうか。
本来、広告効果は媒体とクリエイティブの組み合わせで考えるべきだ。消費者のメディア利用複雑化が課題となっている性質上、自社のユーザーに対して先鋭化する媒体側にこの観点に効くパワーアップを期待するのは現状難しいだろう。そのため、企業は自社商品が次に狙うべきターゲットを意識したクリエイティブ面に注力し、まずは訴求すべきメッセージの精度をより高めるべきだろう。
クリエイティブとメディアの組み合わせについては、メッセージを最大限に伝えられるという観点から探索することが重要な要素となる。

予算が媒体費から制作費にシフト 2024年度以降のメディア利用の未来
こういった背景を踏まえると、2024年度以降は各メディアに適したクリエイティブを制作・出稿する事例が増えていくことが想定される。たとえば、テレビCMをそのままデジタルメディアや音の流れない電車の車内ビジョンで流すのではなく、各メディアに適した短い動画やインタラクティブなコンテンツを制作したり、音が出ないことを前提にその持ち味を活かす表現を選んで制作したり、というケースだ。
そのため、広告業界ではこれまで媒体費に割り当てられてきた予算が、今後は制作費にシフトすることが想定される。
また、テレビ広告の効果は減少し続けるものの、決してデジタル広告がかつてのテレビ広告の代わりを果たしているわけではない上に、過剰な広告量も相まってあまり注視されていないのが現状だ。
単体で強力なメディアが存在しないため、テレビとデジタルを組み合わせて広告効果を最大化するための訴求メッセージとクリエイティブのベストプラクティスを発見することが、効率的な広告出稿の在り方を考えていく上で急務になる。
本来であれば、テレビ×デジタルに限らず、デジタル×デジタル、デジタル×OOH、テレビ×OOH……といったように複数メディアを横断したプロモーションで効果を最大化する手法を検討すべきだ。しかし、「自社商材で訴求すべき事項×メディアの掲出形態×クリエイティブ」の組み合わせ方を考えなければならず、検討範囲が広くなるため、今後数年はテレビ×デジタルが中心となるだろう。